クリニックの集患は、広告を出して人を集めることではなく、患者が受診前に自分でクリニックを確かめる場所の情報を、正しく・一致させて置くことから始まります。患者が確かめる場所は主に3つです。ホームページ、Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)、医療情報ネット(ナビイ)で、この3つの内容が食い違っていると、患者が来院してから診療時間や休診日の違いに気づくことになります。

もう一つの前提は、クリニックの発信には医療広告の規制がかかるということです。ホームページもGoogleマップの投稿もSNSも、医院の名称が分かり受診を誘引する内容であれば、厚生労働省の医療広告等ガイドラインの対象になります。集患の施策を考えるときは、「何を発信すれば来院が増えるか」の前に、「何を発信してよいか」を先に押さえておく必要があります。

この記事は、当サイトの「集患とウェブサイト・Googleマップ」の記事をまとめるページです。広告規制の全体像を整理したうえで、経路ごとの整え方を詳しい記事に案内します。


1. なぜ3つの情報源を同時に整えるのか

患者が確かめる3つの場所

情報源性格更新の主体
クリニックのホームページ患者が自分で検索して開く、クリニックが管理する媒体クリニック自身
Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)地図検索・近隣検索で最初に目に入る媒体クリニック自身(オーナー確認後)
医療情報ネット(ナビイ)医療法にもとづき都道府県が公表する、全国統一の制度上の情報源クリニックが都道府県に報告し、都道府県が公表

医療情報ネットは、医療法第6条の3にもとづき、診療所の管理者が都道府県知事に報告した内容を公表する制度です。名称・開設者・管理者・所在地・電話番号・診療科目・診療日・診療時間などの基本情報が変わったときは、その都度、都道府県への報告(随時報告)が必要です。報告の流れは医療情報ネットの報告で扱っています。

ホームページとGoogleマップはクリニックが直接更新できますが、医療情報ネットは都道府県の確認を経て反映されます。休診日や診療時間を変えるときは、3つを同時に、かつ医療情報ネットは報告のタイムラグを見込んで直す運用にしておくと、情報の食い違いが起きにくくなります。

保険診療のルールで掲載が求められる事項もある

令和6年度以降の診療報酬改定では、明細書の発行状況や、ウェブサイトへの掲載を要件に含む加算の掲示事項など、ホームページへの掲載が制度上求められる項目も増えています。これは集患のための発信ではなく、保険診療の実施に伴う掲載義務です。詳しくはクリニックのホームページに載せるべき情報を参照してください。


2. 集患の広告規制の全体像

クリニックの発信全般に関わる医療広告の規制は、次の3つの考え方でできています。詳しい条文・Q&A・違反例は医療広告ガイドラインの要点にまとめています。

考え方内容
広告に当たる要件患者の受診等を誘引する意図(誘引性)があり、医療機関が特定できる(特定性)内容であれば、ウェブサイト・SNS・チラシ・看板を問わず広告として扱われる(医療法第6条の5)
広告できる事項の限定広告できるのは、名称・所在地・診療科名・診療日時・施設設備・管理運営に関する事項など、医療法第6条の5第3項第1号から第16号までに列挙された事項に限られる
限定解除患者が自分から求めて開くウェブサイトなど(問い合わせ先の明示など4要件を満たすもの)は、限定を外して自由診療の内容・費用などを書ける。ただし体験談・比較優良・誇大な表現の禁止は限定解除でも外れない

集患のために発信内容を増やすときは、この3段階(誘引性・特定性があるか → 広告可能事項に含まれるか → 限定解除で書ける範囲か)に沿って確認すると、規制に触れずに情報を増やせます。


3. 経路ごとの整え方

次の表から、経路ごとの詳しい手順の記事に進めます。

経路誰が見るか整えるもの詳しい記事
Googleマップ近隣で検索する患者オーナー確認、名称・カテゴリ・診療時間、写真、口コミへの返信クリニックのGoogleマップの整え方
ホームページ自分でクリニックを比べて選ぶ患者基本情報、保険診療のルールによる掲載事項、自由診療の情報(限定解除)クリニックのホームページに載せるべき情報
医療情報ネット(ナビイ)制度上の情報を確かめる患者・関係機関新規・定期・随時の報告、掲載内容の確認と修正医療情報ネットの報告
SNS(Instagram・LINEなど)フォロワー・友だち登録した患者投稿・プロフィール・返信の医療広告の確認、LINE公式アカウントの運用クリニックのSNS運用
内覧会(開業前)開院前に見学する地域住民告知方法ごとの規制、案内文に書ける内容、記念品の扱いクリニックの内覧会

4. 開業前後で進める順番

開業前

  1. ホームページとGoogleビジネスプロフィールの基本情報を用意する。 オーナー確認は審査に数営業日かかるため、早めに着手します
  2. 内覧会を開く場合は、告知の前に案内文の内容を医療広告のルールで確認する
  3. 開院と同時に、医療情報ネットへ新規報告する(医療法第6条の3)

開業後・運営中

  1. 3つの情報源(ホームページ・Googleマップ・医療情報ネット)の内容が現状と一致しているかを、変更があるたびに確認する
  2. SNSを運用する場合は、投稿前に誰が確認するかの運用ルールを決めておく
  3. 口コミへの返信、自由診療の情報発信など、内容を増やすときは限定解除の要件を満たしているかを確認する

5. 実行時の落とし穴

  • 3つの情報源がバラバラに更新される:ホームページだけ直して、Googleマップと医療情報ネットの更新を忘れると、患者が見る場所によって違う情報になります
  • 集患を急いで表現を緩める:「地域No.1」「痛くない治療」のような表現は、集患のためであっても医療広告等ガイドラインの禁止事項に当たります
  • SNSの個人アカウントを見落とす:院長・職員の個人アカウントでの発信も、誘引性・特定性があれば医療広告の対象になり得ます
  • 限定解除の要件を満たさずに自由診療の情報を書く:費用や問い合わせ先を示さずに自由診療を紹介すると、限定解除の要件を満たさず広告できない内容になります
  • 保険診療のルールによる掲載事項を見落とす:明細書の発行状況など、令和6年度以降の改定で求められるようになった掲載事項を、集患目的の情報だけに気を取られて抜かしてしまうことがあります

6. まとめ

  • クリニックの集患は、患者が確かめる3つの場所(ホームページ・Googleマップ・医療情報ネット)の情報を一致させることが土台
  • クリニックの発信全般に医療広告の規制がかかる。誘引性・特定性の有無、広告可能事項の範囲、限定解除の要件の3段階で確認する
  • 経路ごとの手順は、Googleマップ・ホームページ・医療情報ネット・SNS・内覧会(開業前)の各記事に整理している
  • 開業前は基本情報の整備と医療情報ネットへの新規報告を、運営中は3つの情報源の一致と発信内容の規制確認を、それぞれ順番に進める

参考資料