クリニックのウェブサイトは、平成30年6月1日から医療広告の規制の対象です。規制の中身は医療法第6条の5と医療法施行規則第1条の9などに書かれており、その解釈を示したものが厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」です。2026年9月時点の最新版は令和8年3月30日の改正(医政発0330第4号、令和8年4月1日施行)で、この改正で略称が「医療広告ガイドライン」から「医療広告等ガイドライン」に変わりました。
押さえるべき点は3つです。第一に、広告できるのは法律で決められた事項だけです(医療法第6条の5第3項。現在は第1号から第16号まで)。第二に、事実であっても比較優良・誇大・体験談・誤認させるビフォーアフター写真などは載せられません。第三に、ウェブサイトなど患者が自分から見に来る媒体では、4つの要件を満たせば広告できる範囲を広げられる(限定解除)仕組みがあります。
この記事では、条文とガイドライン・Q&A・事例解説書にもとづいて、ウェブサイトで書けること・書けないことを整理します。手元のウェブサイトやSNSの表現を見直すときのチェックリストとしても使えるようにしています。
1. 規制の構造:ウェブサイトは「広告」として扱われる
ウェブサイトが対象になった経緯
以前は、医療機関のウェブサイトは原則として広告規制の対象外で、「医療機関ホームページガイドライン」(平成24年9月28日 医政発0928第1号)による自主的な取組に任されていました。平成25年に改正された当時の医療広告ガイドラインは、広告に当たる要件として「誘引性」「特定性」「認知性(一般人が認知できる状態にあること)」の3つを挙げ、ホームページは原則として広告とは見なさないとしていました。
その後、美容医療などのウェブサイトをめぐる相談が増えたことを受けた消費者委員会の建議(平成27年7月7日)を経て、医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)で規制の対象が「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」に広がりました。これにより、ウェブサイトもほかの広告媒体と同じく、是正命令や罰則の対象になっています。
広告に当たるかどうかの判断
現在のガイドライン(第2の1)では、次のすべてに当たるものを広告として扱います。
| 要件 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 誘引性 | 患者の受診などを誘引する意図がある | その情報で利益を受ける側が誘引しているかで判断する。新聞記事は特定の病院を推薦していても誘引性はないとされる |
| 特定性 | 医師の氏名や医療機関の名称が特定できる | 複数の医療機関をまとめて扱っていても特定性はある |
| 内容 | 医業・歯科医業、病院・診療所に関する内容である | ― |
医療機関が広告料を負担して第三者に記事や投稿を書かせている場合(いわゆるステルスマーケティング)は、見た目が第三者の情報でも、実質的に広告として扱われます(ガイドライン第2の2)。
関係する条文
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 医療法第6条の5第1項 | 何人も虚偽の広告をしてはならない |
| 同条第2項 | 比較優良広告・誇大広告・公序良俗に反する広告をしない。厚生労働省令で定める基準に従う |
| 同条第3項 | 広告できる事項(第1号〜第16号) |
| 医療法第6条の6 | 広告できる診療科名 |
| 医療法第6条の8 | 報告命令・立入検査、中止命令・是正命令 |
| 医療法施行規則第1条の9 | 体験談・ビフォーアフター写真などの禁止 |
| 医療法施行規則第1条の9の2 | 広告できる事項の限定を解除する要件 |
| 医療法第87条・第89条 | 罰則 |
「何人も」とあるとおり、規制の対象は医療機関だけではありません。ガイドライン第5とQ&Aでは、広告代理店やポータルサイトの運営会社も命令や罰則の対象になりうるとされています。制作を外部に任せていても、掲載する内容の確認は医療機関の側で行う必要があります。
2. 書けること:広告できる16の事項
医療法第6条の5第3項は、広告できる事項を次のように定めています。令和8年4月の改正で「オンライン診療を行う旨とその内容」(第15号)が加わり、以前の第15号は第16号になりました。
| 号 | 広告できる事項 | ウェブサイトでの例 |
|---|---|---|
| 1 | 医師・歯科医師である旨 | ― |
| 2 | 診療科名 | 「内科」「小児科」など(第6条の6の範囲) |
| 3 | 名称、電話番号、所在地、管理者の氏名 | 医院の概要 |
| 4 | 診療日・診療時間、予約診療の有無 | 診療時間表、予約の案内 |
| 5 | 法令にもとづく指定を受けている旨 | 保険医療機関、生活保護法の指定医療機関など |
| 6 | 医師少数区域経験認定医師である旨 | ― |
| 7 | 地域医療連携推進法人の参加病院等である旨 | ― |
| 8 | 施設・設備・従業者に関する事項 | 駐車場、バリアフリー、医療機器、職員数 |
| 9 | 医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴など | 医師紹介(厚生労働大臣が定めるもの) |
| 10 | 管理・運営に関する事項 | 予約や受付の方法、費用の支払方法 |
| 11 | 連携に関する事項 | 紹介先の病院 |
| 12 | 医療に関する情報提供の事項 | 相談窓口、情報開示 |
| 13 | 提供する医療の内容 | 検査・手術・治療の方法(厚生労働大臣が定めるもの) |
| 14 | 医療の提供の結果 | 厚生労働大臣が定めるものに限る |
| 15 | オンライン診療を行う旨とその内容 | 令和8年4月に追加 |
| 16 | 前各号に準ずるものとして厚生労働大臣が定める事項 | 広告告示(平成19年厚生労働省告示第108号)で定める |
医療の内容について、ガイドラインは「客観的な評価が可能であり、かつ事後の検証が可能な事項に限られる」としています。「痛くない」「すぐ治る」のような主観的な表現や、効果を約束する表現は、この範囲に入りません。
医師の紹介で書けること
医師紹介のページは、第9号の「略歴」として書けるものに限られます。ガイドラインが想定している略歴は、生年月日、出身校、学位、免許の取得日、勤務した医療機関(診療科と期間を含む)などです。専門医や認定医の資格は略歴には含まれず、専門医は告示で定められた範囲でだけ広告できます。日本専門医機構などが認定した専門医であれば、「日本専門医機構認定○○専門医」のように認定した団体名を付けて書きます。「厚生労働省認定」と書けば虚偽広告に、団体名のない「○○専門医」は誇大広告に当たるとされています。
3. 書けないこと:禁止される広告
ガイドライン第3-1は、禁止される広告を次のように整理しています。法律の禁止に当たるものと、ガイドラインで「厳に慎むべき」とされているものがあります。
| 類型 | 根拠 | ガイドラインの例(要旨) |
|---|---|---|
| 虚偽広告 | 法第6条の5第1項 | 「絶対安全な手術」、加工・修正した術前術後の写真、根拠や調査方法を示さない「○%の満足度」 |
| 比較優良広告 | 同条第2項第1号 | 「日本一」「No.1」「最高」などの最上級の表現(事実であっても不可)、「著名人も当院で治療を受けています」 |
| 誇大広告 | 同項第2号 | 「知事の許可を取得した病院です!」、要件のない「○○センター」、根拠の乏しいリスクの強調で受診を促すもの |
| 公序良俗に反する広告 | 同項第3号 | わいせつ・残虐な図画、差別を助長する表現 |
| 広告できる事項以外の広告 | 同条第3項 | 「専門外来」、死亡率・術後生存率、未承認医薬品による治療 |
| 体験談 | 施行規則第1条の9第1号 | 治療の内容や効果についての、患者の主観や家族からの伝聞にもとづく体験談 |
| ビフォーアフター写真 | 施行規則第1条の9第2号 | 誤認させるおそれのある治療前後の写真 |
| 品位を損ねる広告など | ガイドライン | 「キャンペーン実施中」「50%オフ」などの費用の強調、医療と関係のないプレゼントでの誘引 |
誇大広告については、実際に誰かが誤認した結果までは必要なく、常識的に誤認させるものかどうかで判断するとされています。
体験談は「内容が正しくても」載せられない
自院のウェブサイトに患者の体験談を載せることは、施行規則第1条の9第1号で禁止されています。ガイドラインは、書かれている内容が広告できる範囲に収まっていても不可としています。厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」(令和8年3月)では、次のような例が違反例として示されています。
- 口コミサイトの口コミを、自院のウェブサイトにそのまま転載する
- 口コミのうち、自院に都合のよいものだけを抜き出して載せる(誇大広告にも当たる)
- スタッフ自身の体験談や、スタッフが患者の代わりに書いた体験談を載せる
- 患者の直筆のアンケートを加工して転載する
- 症例紹介の中に、患者の主訴という形で体験談を入れる
ビフォーアフター写真は「説明がそろえば」禁止に当たらない
治療前後の写真は、それだけを載せると誤認させるおそれがあるとして禁止されます。ただし、治療内容・費用・主なリスク・副作用などの詳しい説明を同じページに付ければ、この禁止には当たらないとされています。説明をリンク先に回したり、極端に小さい文字にしたりするのは認められません。Q&Aでは、術前だけ・術後だけの写真も同じ扱いとされています。
ほかの法律との関係
医薬品の商品名を挙げて「○○錠を処方できます」と書くことは、医療広告としては認められません。ガイドラインは、医薬品医療機器等法(第66条・第68条)、健康増進法(第31条第1項)、景品表示法(第5条)、不正競争防止法(第21条第2項)の規制も別に受けることを示しています。
4. 広告できる範囲を広げる:限定解除の4要件
ウェブサイトのように、患者が自分から求めて情報を手に入れる媒体では、次の4つの要件をすべて満たせば、第6条の5第3項の事項に限らず情報を載せられます(医療法施行規則第1条の9の2)。③と④は、自由診療について情報を出す場合にだけ求められます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① | 医療に関する適切な選択に役立つ情報で、患者が自分から求めて手に入れる情報を表示するウェブサイトなどであること |
| ② | 患者が簡単に問い合わせできるよう、問い合わせ先をはっきり示すこと |
| ③ | 自由診療について、通常必要とされる治療等の内容・費用などを示すこと |
| ④ | 自由診療について、治療等の主なリスク・副作用などを示すこと |
限定解除はあくまで「広告できる事項の限定」を外すもので、虚偽・比較優良・誇大・体験談の禁止は外れません。また、バナー広告や検索連動型の広告、費用を払って検索結果の上位に出した表示は①を満たさないとされています。Q&Aでは、「予約専用」とだけ書いた電話番号や自動音声だけで折り返しのない番号は②を満たさず、デメリットを簡単に並べただけでは④を満たさないとされています。
5. 違反したときの流れ
医療広告の指導は、診療所の所在地の都道府県・保健所設置市・特別区が行います。ガイドライン第5によると、流れは次のとおりです。
| 段階 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 調査・行政指導 | ガイドライン第5 | 通常は任意の調査と行政指導から始まる |
| 報告命令・立入検査 | 法第6条の8第1項 | 都道府県知事・保健所設置市の市長・特別区の区長が行う |
| 中止命令・是正命令 | 同条第2項 | 期限を定めて命じる。先に弁明の機会が与えられる |
| 罰則 | 法第87条 | 虚偽広告や命令違反は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 罰則 | 法第89条 | 報告の拒否・虚偽報告、立入検査の拒否などは20万円以下の罰金 |
| 公表 | ガイドライン第5 | 命令や告発をしたときは、原則として事例を公表する |
悪質な場合は、医療法第28条・第29条にもとづく管理者の変更命令や開設許可の取消しなどの行政処分もありえます。命令の相手は、診療所であれば開設者または管理者です。
ネットパトロール
厚生労働省は委託事業「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業」として、「医療機関ネットパトロール」を運営しています。医療広告ガイドラインに違反している疑いのあるウェブサイトを誰でも通報でき、監視の結果、改善が見られない医療機関の情報は所管の自治体に提供され、指導は自治体が行います。医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会(第7回、令和8年3月26日)の資料によると、令和7年度(2月まで)の通報の受付は6,324サイトで、そのうち医療広告関係が5,009サイトでした。
6. 自院のウェブサイトを見直すチェックリスト
- 「日本一」「No.1」「最高」「地域で唯一」など、他院と比べて優れていることを示す表現がない
- 「絶対」「必ず治る」「痛くない」など、効果や安全を約束する表現がない
- 患者の体験談、口コミの転載、口コミの抜粋、患者アンケートの転載がない
- 治療前後の写真には、同じページに治療内容・費用・リスク・副作用の説明がある
- 「○○専門外来」の表記がない(診療時間表の中も含めて)
- 専門医の表記に、認定した団体名が付いている
- 自由診療のページに、標準的な費用・治療期間・回数と、主なリスク・副作用がある
- 問い合わせ先として、実際につながる電話番号やメールアドレスを載せている
- 「期間限定」「○%オフ」など、費用を強調する表現がない
- 医薬品の商品名を挙げて処方を案内していない
- SNS・動画・チラシ・院外看板も同じ基準で確認している
7. 見直しの手順
- 媒体を洗い出す:ウェブサイト、SNSのアカウント、動画、ポータルサイトの掲載、看板、チラシを一覧にします。制作会社や代理店が作ったものも含めます。
- 最新の資料と照らし合わせる:ガイドライン、Q&A、事例解説書(第6版)は令和8年3月に改正・改定されています。以前の版をもとに作ったページは、改めて確かめます。
- 表現を直す:禁止事項に当たる表現は削除し、自由診療のページは限定解除の要件を満たす形に書き直します。
- 判断に迷う表現は所管に相談する:医療広告の相談窓口は、各自治体(保健所など)です。厚生労働省の医療広告規制のページに窓口の一覧があります。
- 更新のルールを決める:新しいページや投稿を出す前に、誰が上のチェックリストで確認するかを決めておきます。
8. 落とし穴
- 古い版で判断する:ガイドラインは令和6年3月と令和8年3月にも改正されています。過去の制作時に確認したから大丈夫、とは限りません。
- 「事実だから書ける」と考える:比較優良広告は、事実であっても禁止されます。受賞歴や件数の多さを他院との比較の形で示すのは避けます。
- 制作会社に任せきりにする:広告の責任は掲載する医療機関にあり、制作会社や代理店も命令の対象になりえます。納品前に内容を確かめる手順を決めておきます。
- SNSを別扱いにする:事例解説書の第6版では、SNSや動画での広告の例が増えています。ウェブサイトと同じ基準で確認します。
- 口コミを集める仕組みを作る:医療機関が患者に肯定的な体験談の投稿を頼むと、有償か無償かにかかわらず誘引性が生じるとQ&Aは説明しています。
9. まとめ
- クリニックのウェブサイトは平成30年6月から医療広告規制の対象。最新のガイドラインは令和8年3月30日改正で、略称は「医療広告等ガイドライン」になった
- 広告できるのは医療法第6条の5第3項の16の事項。令和8年4月に「オンライン診療を行う旨とその内容」が加わった
- 比較優良・誇大・体験談・誤認させるビフォーアフター写真は、事実であっても載せられない
- ウェブサイトは限定解除の4要件を満たせば載せられる範囲が広がるが、禁止事項は外れない
- 違反すると調査・指導から命令、罰則(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)まで進みうる
具体的な表現が認められるかどうかは、診療所の所在地の自治体(保健所など)に確認してください。
参考資料
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正: https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf
- 厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」令和8年3月改定: https://www.mhlw.go.jp/content/001683595.pdf
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」: https://www.mhlw.go.jp/content/001683116.pdf
- 厚生労働省 医政局総務課 事務連絡(令和8年3月30日): https://www.mhlw.go.jp/content/001683596.pdf
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」(相談窓口の一覧): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
- 厚生労働省 第7回医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会 資料2(令和8年3月26日): https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001680058.pdf
- 医療機関ネットパトロール(厚生労働省委託事業): https://iryoukoukoku-patrol.mhlw.go.jp/
- e-Gov法令検索「医療法」(昭和23年法律第205号): https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205
- e-Gov法令検索「医療法施行規則」(昭和23年厚生省令第50号): https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100050