2026年9月時点で、クリニックの受付での資格確認は、マイナ保険証(マイナンバーカードまたはスマートフォン)か資格確認書が基本です。従来の健康保険証は2025年12月1日までにすべて有効期限を迎え、期限切れの保険証などで受診した患者をシステムで照会して請求する暫定対応も、2026年7月31日で終わりました。

保険医療機関は、患者が電子資格確認(オンライン資格確認)を求めたときに対応できる体制を、あらかじめ整えなければなりません(保険医療機関及び保険医療養担当規則第3条)。そのうえで受付が決めておくべきことは、マイナ保険証・スマホ・資格確認書ごとの受付の手順と、エラーが出たときの手順の2つです。エラー時の手順は「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について」(令和5年7月10日 保発0710第1号)で示されています。

この記事では、療養担当規則と厚生労働省の通知・事務連絡・公表資料にもとづいて、窓口の対応と準備を整理します。令和8年度診療報酬改定で新設された加算の要件は令和8年度改定で診療所が確かめることでも扱っています。


1. 義務と例外

原則義務化

療養担当規則第3条は、受給資格の確認の方法として、電子資格確認、資格確認書、保険者への照会などを定めています。患者が電子資格確認を求めた場合は電子資格確認などで確認し(第2項)、それに対応できる体制をあらかじめ整えなければなりません(第4項)。厚生労働省は、令和5年4月1日からオンライン資格確認の導入を原則として義務づけたと説明しています。

例外と経過措置

レセプトを紙で請求している医療機関などは、この義務の対象外です(療養担当規則第3条第3項)。やむを得ない事情がある医療機関には経過措置があり、厚生労働省の資料では、光回線が整備されていない場合(整備から6か月後まで)、改築工事中や臨時の施設(終了まで)、その他特に困難な事情がある場合(事情が解消されるまで)などが挙げられています。令和6年4月以降に指定を受ける医療機関で経過措置に当たる場合は、指定申請のときに猶予届出書を出します。

義務化の対象外の医療機関や一部の経過措置の医療機関向けに、資格情報だけを取得できる「資格確認限定型」のオンライン資格確認も用意されています。


2. 保険証の廃止と暫定対応の終了

日付できごと資料
2024年12月2日従来の健康保険証の新規発行が停止厚生労働省のマイナ保険証のページ
2025年12月1日発行済みの健康保険証の有効期限が終了同上
2025年11月12日期限切れの保険証などを持参した患者の暫定対応(当初は2026年3月末まで)厚生労働省 事務連絡
2026年3月25日暫定対応を2026年7月末まで継続。2025年12月時点でマイナ保険証の利用率が6割を超えたことも示された厚生労働省 事務連絡「マイナ保険証の円滑な利用に向けた対応について(周知)」
2026年7月31日暫定対応の終了厚生労働省 窓口配布用の案内

暫定対応は、期限切れの保険証や「資格情報のお知らせ」だけを持参した患者について、被保険者番号などでオンライン資格確認等システムに照会し、確認できた負担割合で請求する運用でした。この運用が終わったため、2026年8月以降は、マイナ保険証か資格確認書で資格を確認するのが基本です。8月以降に期限切れの保険証だけを持参した患者への個別の扱いを明示した資料は、この記事の執筆時点では確かめられていません。受付での扱いは、厚生労働省の最新の事務連絡で確認してください。

後期高齢者の資格確認書

後期高齢者医療の被保険者には、2026年7月末までの暫定措置として資格確認書が全員に交付されていました。千葉県後期高齢者医療広域連合の案内(2026年5月1日更新)では、8月以降は85歳以上には全員に資格確認書を、84歳以下でマイナ保険証の利用実績がある人(過去12か月に6回以上かつ概ね直近3か月以内に利用)には「資格情報のお知らせ」を送るとされています。高齢の患者が資格確認書と資格情報のお知らせのどちらを持っているかは人によって違うことを、受付で知っておく必要があります。


3. 受付の手順

持参するものと確認の方法

患者が持参するもの確認の方法受付の注意
マイナンバーカード顔認証付きカードリーダーで本人確認し、資格情報を取得顔認証がうまくいかない場合は暗証番号、または目視モード
スマートフォン(マイナ保険証を搭載)汎用カードリーダー、または次期の顔認証付きカードリーダー対応していない場合はマイナンバーカードの提示を求める
資格確認書券面で資格を確認(オンライン資格確認等システムでの照会も可)有効期限を確かめる
何も持っていない原則として10割負担(下記のエラー時の対応も参照)

資格確認書は、マイナンバーカードがない人、保険証利用の登録をしていない人、登録を解除した人、電子証明書の期限が切れた人に、申請なしで無償交付されます。介助が必要な人などは申請でも交付を受けられます。有効期限は5年以内で、保険者が定めます。

スマートフォンのマイナ保険証

スマートフォンのマイナ保険証は2025年9月19日から、準備の整った医療機関で順次使えるようになりました。iPhoneはAppleウォレット、Androidはマイナポータルアプリで使います。医療機関の側では、顔認証付きカードリーダーに加えて対応機種の汎用カードリーダーが必要で、汎用カードリーダーの導入の補助は2026年1月31日で終了しています。令和8年4月から順次発売の次期の顔認証付きカードリーダーは、単体でスマートフォンを読み取れるため、汎用カードリーダーが要らないとされています。対応している医療機関は、ステッカーと厚生労働省の検索ページで分かるようになっています。


4. エラーが出たときの対応

「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について」(令和5年7月10日 保発0710第1号)の手順は次のとおりです。

  1. マイナポータルの資格情報画面で確認する:患者のスマートフォンでマイナポータルの資格情報の画面を見せてもらいます。
  2. システム障害時モード・目視モードを使う:カードリーダーや顔認証の不具合の場合は、それぞれのモードで確認します。
  3. 被保険者資格申立書に記入してもらう:それでも確認できない場合は、患者に被保険者資格申立書を記入してもらい、申し立てた負担割合で請求します。過去に受診歴があり資格が変わっていなければ、口頭で確認して申立書の提出があったものとして扱えるとされています。
  4. 資格が特定できない場合:レセプトの摘要欄に記載したうえで「不詳」として請求できるとされています。
  5. カードも資格を確認できるものも持っていない場合:原則として10割の負担です。

厚生労働省の医療機関向けのページには、被保険者資格申立書、目視モード、障害時モードの資料が掲載されています。周知素材のページには2026年6月に「代替の資格確認方法」の資料が追加されています。受付に、この手順と申立書の様式を印刷して置いておくと、エラーのたびに調べる手間がなくなります。


5. 機器と体制の準備

準備すること内容
顔認証付きカードリーダーオンライン資格確認の基本の機器。更新の時期に次期の機種を検討する
スマホ対応汎用カードリーダー(補助は終了)か、次期の顔認証付きカードリーダー
取得した情報の閲覧取得した薬剤情報や特定健診の情報を、診察室で閲覧・活用できるようにする
院内掲示マイナ保険証の利用の案内や、加算の掲示要件を満たすポスター(厚生労働省の周知素材)
手順書本記事の受付の手順とエラー時の手順、申立書の様式

6. 令和8年度改定の加算との関係

令和8年度診療報酬改定で、医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算が新設されました(初診時は月1回、加算1が15点・加算2が9点・加算3が4点、再診時は月1回2点)。

基本診療料の施設基準等(令和8年厚生労働省告示第70号)では、要件として、オンライン請求、明細書の無償交付、電子資格確認の体制、取得した情報を診察室などで閲覧・活用できること、電子資格確認に係る十分な実績、院内掲示、原則としてウェブサイトへの掲載、マイナポータルの情報に基づく健康相談に応じる体制などが並んでいます。厚生労働省の説明資料では、マイナ保険証の利用率が30%以上であることが示されています。加算1・2は、電子処方箋や電磁的な診療情報の共有の要件が加わります。

旧加算を届け出ていた医療機関も、新しい加算を算定するには改めて届出が必要です。利用率の算定方法の細部は、施設基準の通知と疑義解釈資料で確かめてください。


7. 受付のチェックリスト

  • 受付の全員が、マイナ保険証・スマホ・資格確認書ごとの確認方法を説明できる
  • 顔認証がうまくいかないときの暗証番号・目視モードの切り替えを、全員ができる
  • 被保険者資格申立書の様式を受付に置いている
  • システム障害時モードの使い方を、手順書にしている
  • 高齢の患者が資格確認書と資格情報のお知らせのどちらかを持っていることを、受付が知っている
  • スマホのマイナ保険証に対応しているかどうかを、院内とウェブサイトで案内している
  • マイナ保険証の利用率を毎月確かめている
  • 加算の掲示要件を満たす院内掲示とウェブサイトの掲載がある

8. 落とし穴

  • 暫定対応の終了を知らずに受け付ける:期限切れの保険証で照会して請求する運用は2026年7月31日で終わりました。最新の事務連絡を確かめずに以前の運用を続けないようにします。
  • エラー時に10割を求めてしまう:資格が確認できなくても、申立書による請求や「不詳」での請求の手順があります。手順を知らないと、患者に不要な負担を求めることになります。
  • 資格情報のお知らせを資格確認書と取り違える:資格情報のお知らせは、マイナ保険証を持つ人に送られる書類です。資格確認書とは扱いが違うことを受付で共有します。
  • スマホ対応を案内しないまま始めない:対応していない医療機関でスマホだけを持参した患者が困ることがあります。対応の有無を案内しておきます。
  • 旧加算の届出のまま算定する:電子的診療情報連携体制整備加算は新設の項目で、改めて届出が必要です。

9. まとめ

  • 保険医療機関はオンライン資格確認の体制を整える義務がある(療養担当規則第3条。紙請求の医療機関などを除く)
  • 従来の保険証は2025年12月1日までに有効期限を迎え、期限切れの保険証の暫定対応も2026年7月31日で終了した
  • 受付はマイナ保険証(カード・スマホ)か資格確認書で資格を確認する
  • エラー時は、マイナポータルの資格情報画面、障害時モード・目視モード、被保険者資格申立書の順に対応する(保発0710第1号)
  • 令和8年度改定の電子的診療情報連携体制整備加算は、マイナ保険証の利用率などが要件で、届出が必要

窓口の取り扱いは事務連絡で見直されることがあります。厚生労働省のオンライン資格確認のページで最新の情報を確認してください。


参考資料