クリニックのSNSの投稿は、医院の名前が分かり、受診を促す内容であれば、ウェブサイトと同じく医療広告の規制の対象です。厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」は、SNSではプロフィール・投稿・返信の3つで情報が発信されているとし、そのどこか1か所に虚偽・誇大・比較優良の表現や体験談が含まれていれば違反になると説明しています。ハッシュタグの部分や、院長・職員の個人アカウントの投稿も対象になり得ます。
一方で、診療時間や休診のお知らせ、院内の設備の紹介など、広告できる事項の範囲の発信は問題なく行えます。SNSを始める前に「何を発信するか」「誰が確認して出すか」を決めておくことが、違反を防ぐいちばんの近道です。
この記事では、医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)、同ガイドラインに関するQ&A、事例解説書(第6版、令和8年3月一部改訂)にもとづいて、SNSで発信するときの注意と、LINE公式アカウントで患者に連絡するときの注意を整理します。医療広告の全体像は医療広告ガイドラインの要点で扱っています。
1. なぜSNSの投稿が医療広告になるのか
広告に当たる3つの要件
医療広告等ガイドラインは、次の3つの要件をいずれも満たすものを医療広告と判断するとしています。
- 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
- 医業を提供する者の氏名や、病院・診療所の名称が特定可能であること(特定性)
- 医業または病院・診療所に関する内容であること
医院の公式アカウントは名前が分かるので特定性があり、医院の診療について発信すれば、ほとんどの投稿は誘引性もあると見なされます。「SNSは広告ではなく情報発信だから大丈夫」という考え方は通用しないと考えておくのが安全です。
SNSのどこが対象になるか
事例解説書(第6版)の第2章「SNS・動画広告における事例」は、SNSでの医療広告を次の構成で整理しています。
| 構成 | 内容 | 注意点(事例解説書の説明) |
|---|---|---|
| ①プロフィール | アカウントの紹介文、所在地、リンク | 禁止される表現があれば、それだけで違反 |
| ②投稿 | テキスト、画像、動画(一定期間で限定公開されるものを含む) | ハッシュタグの部分も対象。投稿内容と関係のないハッシュタグで誘引するのは不適切 |
| ③返信 | 自分の投稿への返信など | 字数制限があるため返信で続きを書く場合、一連の投稿として扱われる |
さらに事例解説書は、個人アカウントによる情報であっても、医療機関・医師等への特定性と誘引性をいずれも有する場合は医療広告に相当するとしています。院長が個人のアカウントで「うちの医院の新しい治療」を紹介すれば、医院の公式アカウントと同じ基準で見られます。
対象外になるもの
医療広告等ガイドラインとQ&Aは、個人が運営するSNSの個人のページや第三者の口コミサイトに患者が体験談を載せることは、医療機関が費用を負担して掲載を頼むなど誘引性が認められる場合を除き、広告に当たらないとしています。患者が自分の意思で書いた感想は医院の広告ではありません。ただし、その投稿を医院のアカウントで引用・共有すると、医院が体験談を紹介したことになる点に注意が必要です(後述)。
また、ガイドラインは、職員の採用を目的としたいわゆる求人広告は、受診を誘引するものではないため対象外としています。看護師や医療事務の募集をSNSで出すこと自体は、医療広告の規制とは別に考えられます。
2. 発信してよい内容と避ける内容
判断の早見表
| 発信の例 | 扱い | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 診療日・診療時間、臨時休診のお知らせ | 発信できる | 診療日・診療時間は法第6条の5第3項で広告可能な事項 |
| 所在地、駐車場、バリアフリーの案内 | 発信できる | 所在の場所、駐車設備、バリアフリー構造などはガイドラインで広告可能とされている |
| インフルエンザの予防接種の受付開始 | 発信できる範囲で書く | 「予防接種の実施」は広告可能。対象者・回数・1回当たりの費用も書けるが、ワクチンの商品名や発症予防率などの効果は書けない |
| 季節の健康情報(熱中症の予防など) | 書き方次第 | 一般的な情報でも医院名と並べれば誘引性が生じ得る。誇大な表現を避ける |
| 「地域No.1」「最新の機器で痛くない」 | 避ける | 比較優良広告・誇大広告に当たるおそれ |
| 患者の感想(「楽になった」など)の紹介・引用 | 避ける | 治療等の内容又は効果に関する体験談は禁止 |
| 治療前後の写真 | 原則避ける | 詳細な説明を同じ場所に付けなければ違反 |
| 「今月だけ○円」などのキャンペーン | 避ける | 費用を強調した広告は品位を損ねるものとして厳に慎むべきとされている |
禁止される広告
医療広告等ガイドラインの第3-1は、禁止される広告として、虚偽広告、比較優良広告、誇大広告、公序良俗に反する内容の広告、広告可能事項以外の広告、患者等の主観に基づく治療等の内容又は効果に関する体験談、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等を挙げています。事例解説書は、SNSではこれらがプロフィール・投稿・返信のいずれかに含まれていれば違反になるとしています。
体験談の引用・共有
事例解説書(第6版)の事例(41)は、医院の公式アカウントが患者の投稿を引用して「ご来院いただき、ありがとうございます」と紹介した例を挙げ、他者の投稿を引用することで自院のサービス等の体験談を紹介している場合も違反となると説明しています。患者のお礼の投稿に反応したくなる場面でも、医院のアカウントで引用・共有・リポストしない運用にしておきます。
ビフォーアフター写真
事例解説書の事例(42)は、SNSでビフォーアフター写真を載せる場合、写真の付近に、通常必要とされる治療内容・費用と、主なリスク・副作用の詳細な説明が必要だとしています。説明が不足しているもの、説明を自院のホームページなど別のリンク先に回しているものは違反です。保険診療が中心の診療所では、SNSにビフォーアフター写真を載せないと決めてしまうのが、運用上いちばん確実です。
自由診療を紹介する場合
自由診療は、医療広告等ガイドラインの「広告可能事項の限定解除」の要件をすべて満たした場合に、広告できる範囲が広がります。
- 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 問い合わせ先を記載するなど、患者等が容易に照会できるようにすること
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項を示すこと
- 自由診療に係る治療等の主なリスク、副作用等に関する事項を示すこと
事例解説書(第6版)の事例(40)と(43)は、SNSでの限定解除について次のように説明しています。
- 情報は、プロフィール・投稿・返信の中で一体的かつ一覧性をもって示す必要がある
- SNS上の1つの投稿は単独で1つの広告として扱われるため、各投稿で必要な情報が完結している必要がある
- 「詳細はホームページで」と別のリンク先に回すのでは不十分
- 必要な情報が複数のSNSに分散していて、1つのSNSだけでは確認できないものは分かりにくい例とされている
- 最低金額だけの表示は、標準的な費用の表示にならない。最低金額から最高金額などを示す
- 主なリスク・副作用を極端に小さな文字で書いたもの、禁忌や注意事項(「当日は飲酒を控えて」など)だけを書いたものは、リスク・副作用の情報提供に当たらない
文字数の少ないSNSでこれを満たすのは手間がかかります。自由診療の個別の治療をSNSで宣伝しないという方針も、十分に合理的な選択です。
3. LINE公式アカウントで患者に連絡するときの注意
登録者だけへの配信も規制の対象
LINE公式アカウントの配信は、友だち登録をした人にしか届きません。しかし、医療広告等ガイドラインに関するQ&Aは、医療機関の情報取得を希望した人だけが閲覧できるウェブサイトも広告規制の対象(Q1-10)、患者の希望で配布するメールマガジンやパンフレットも広告規制の対象(Q1-11)としています。事例解説書(第6版)の事例(38)も、会員限定ページであっても、虚偽広告や比較優良広告などは通常のウェブサイトと同様に禁止されるとしています。
これらの考え方からすると、友だちへの一斉配信も、ウェブサイトと同じ基準で内容を確かめるのが安全です。「登録者限定の割引クーポン」のような、費用を強調した配信は避けます。
個人情報の利用目的を公表する
個人情報保護委員会と厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(令和8年4月一部改正)は、個人情報を取得するにあたって、あらかじめ利用目的を公表しておくか、取得後速やかに本人に通知・公表しなければならないとし、公表の方法として、院内に掲示するとともに、可能な場合はホームページに掲載するなど、なるべく広く公表する必要があるとしています。
友だち登録や予約で氏名・連絡先などを受け取る場合は、予約の確認、休診の案内などの利用目的を、院内掲示とホームページの個人情報の取扱いに書いておきます。
守秘義務に触れるやり取りを避ける
医師には刑法第134条の守秘義務があり、正当な理由がないのに業務上知り得た人の秘密を漏らすと、6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金の対象になります。LINEのやり取りは端末の画面に表示され、家族が目にすることもあります。病名や検査結果など診療の内容に触れる連絡をLINEで行うかどうかは、院内で方針を決めてからにします。予約日時の確認や休診のお知らせなど、診療の内容に触れない連絡に用途を絞るのも1つの方法です。
医療相談を受けるかどうかを決める
LINEやInstagramのメッセージ機能には、症状の相談が届くことがあります。メッセージでの回答は診察に代わるものではないため、症状の相談には個別に答えず、受診や電話での問い合わせを案内する定型文をあらかじめ用意しておくと、担当者が迷いません。
4. 運用のルールを決める
決めておくこと
| 項目 | 決める内容の例 |
|---|---|
| 目的 | 診療時間・休診の案内、院内の設備や取り組みの紹介、採用の告知など、発信する目的を絞る |
| 担当と確認 | 投稿を作る人と、出す前に確認する人(院長または事務長)を分ける |
| 発信しない内容 | 体験談の紹介・引用、ビフォーアフター写真、比較・最上級の表現、キャンペーン |
| 写真 | 患者が写り込んだ写真は使わない。職員の顔を出す場合は本人の同意を得る |
| コメント・メッセージ | 返信の定型文を用意し、診療の内容に触れる返信をしない |
| アカウント管理 | 医院として管理するメールアドレスで登録し、担当者の交代や退職のときにパスワードを変える |
| 職員の個人アカウント | 医院の診療を宣伝する投稿をしないよう、就業規則や院内のルールで伝える |
投稿前のチェックリスト
- 「No.1」「最高」「絶対」「痛くない」など、比較・最上級・効果を保証する表現がない
- 患者の感想や体験談を紹介・引用していない
- 治療前後の写真を載せていない(載せる場合は詳細な説明が同じ投稿内にある)
- 費用を強調した表現や期間限定の割引がない
- ハッシュタグが投稿の内容と関係している
- 患者や第三者が写り込んでいない
- 自由診療を紹介する場合、内容・費用・期間と回数・主なリスクと副作用が同じSNSの中で一体的に示されている
- 診療時間などの情報が、ホームページやGoogleマップと一致している
診療時間や休診日は、SNS・ホームページ・Googleマップ・医療情報ネットで食い違いが起きやすい情報です。ホームページの掲載内容はクリニックのホームページに載せるべき情報、Googleマップの整え方はクリニックのGoogleマップの整え方、医療情報ネットの報告は医療情報ネット(ナビイ)の報告で扱っています。
5. 落とし穴
- インフルエンサーに紹介を頼む:消費者庁の案内によると、令和5年10月1日から、一般消費者が広告であることを判別できない広告(いわゆるステルスマーケティング)は景品表示法違反になり、事業者がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示して行わせるものも含まれます。医療広告の面でも、医院が便宜を図って頼んだ体験談は誘引性があると判断されます。
- 運用代行の業者に任せきりにする:医療広告等ガイドラインは、医療機関だけでなく広告代理店やアフィリエイターなども含め、何人も広告規制の対象としています。業者が作った投稿でも医院のアカウントから出る以上、最終確認は医院で行います。
- 「詳細はホームページで」で済ませる:自由診療の情報を別のリンク先に回すのは、事例解説書で不十分とされています。
- 職員の個人アカウントでの宣伝:個人アカウントでも、医院が特定でき受診を誘引する内容なら医療広告に相当します。
- 否定的なコメントに反論する:経過を説明すると、投稿者が患者であることや診療の内容を明かすことになりかねません。口コミへの返信の考え方はGoogleマップの記事の口コミ対応の節と同じです。
6. まとめ
- 医院名が分かり受診を促す投稿は、SNSでも医療広告の規制の対象。プロフィール・投稿・返信・ハッシュタグのどこに禁止表現があっても違反になる
- 個人アカウントでも、医院が特定でき誘引性があれば医療広告に相当する
- 体験談の紹介・引用、説明のないビフォーアフター写真、比較・誇大な表現、費用の強調は避ける
- 自由診療の紹介は、内容・費用・期間と回数・主なリスクと副作用を同じSNSの中で一体的に示す必要がある。別のリンク先に回すのは不十分
- LINEの登録者向け配信も同じ基準で確かめる。個人情報の利用目的を公表し、守秘義務に触れるやり取りを避ける
SNSの仕様や医療広告の運用は改訂されることがあります。発信のルールを決めるときは、厚生労働省の最新の医療広告等ガイドライン、Q&A、事例解説書を確認してください。
参考資料
- 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」令和8年3月30日最終改正: https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf
- 厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」令和8年3月改定: https://www.mhlw.go.jp/content/001683595.pdf
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」令和8年3月: https://www.mhlw.go.jp/content/001683116.pdf
- 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(令和8年4月一部改正): https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制」: https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
- e-Gov法令検索「刑法」第134条: https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045