クリニックのGoogleマップの表示は、Googleビジネスプロフィールのオーナー確認をして、自院で管理できる状態にすることから始めます。オーナー確認をしていないと、名称・診療時間・電話番号が古いままでも直せません。管理できるようになったら、正式名称とカテゴリ、診療時間と休診日、写真の順に整えます。

口コミについては、Googleのポリシーと医療広告の規制の両方が関わります。見返りを条件にした依頼、肯定的な口コミだけを選んで募ること、否定的な口コミを妨げることはGoogleのポリシーで禁止されています。また、医療機関が患者に肯定的な体験談の投稿を頼むと、有償か無償かにかかわらず誘引性が生じると、厚生労働省の医療広告等ガイドラインに関するQ&Aは説明しています。返信では、医師の守秘義務(刑法第134条)に触れない書き方が必要です。

この記事では、Googleの公式ヘルプと、医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)・Q&A・事例解説書にもとづいて、整える手順と口コミ対応の考え方を整理します。医療広告の全体像は医療広告ガイドラインの要点で扱っています。


1. なぜGoogleマップの表示を放っておけないのか

Googleマップのビジネスプロフィールは、医院が登録していなくても、地図上に存在する事業所として表示されていることがあります。この状態では、次のような問題が起きます。

  • 開業時や移転前の情報、以前の診療時間が残り続ける
  • 休診日や臨時休診が反映されず、患者が来院してから閉まっていると気づく
  • 医院が把握していない写真やカテゴリが表示される
  • 口コミに返信する手段がない

オーナー確認をしてプロフィールを管理できる状態にすれば、医院の側で情報を直せるようになります。まず、表示されている内容が正しいかどうかを確かめ、誰が管理するかを決めることが出発点です。

医療広告の規制との関係

厚生労働省の医療広告等ガイドラインやQ&A、事例解説書には、「Google」や「マップ」を名指しした記述はありません。ただし、ガイドラインは、患者の受診を誘引する意図があり(誘引性)、医療機関が特定できる(特定性)表示を広告として扱います。医院自身が入力する説明文・写真・投稿は、医院が患者を誘引するために出す表示なので、ウェブサイトと同じ基準で確かめておくのが安全です。「地域No.1」「最新の設備で痛くない」などの表現は、ウェブサイトと同じく避けます。


2. 整える手順

手順1:オーナー確認をする

Googleのヘルプによると、オーナー確認をするとプロフィールのオーナー権限を得て、ビジネス情報を編集できるようになります。確認の方法は、電話・SMS、メール、ライブビデオ通話、郵送(ハガキ)、動画の録画のいずれかで、どれが使えるかはビジネスによって異なります。審査は5営業日ほどかかり、まれにもっと長くなるとされています。

オーナー確認をするアカウントは、院長個人の私用アカウントではなく、医院として管理するアカウントにしておくと、担当者が替わったときの引き継ぎがしやすくなります。管理者を複数人に設定し、退職者の権限を外す手順も決めておきます。

手順2:名称とカテゴリを正しくする

項目Googleのガイドライン(要旨)クリニックでの注意
ビジネス名実際に使っている正式な名称を使う。キャッチフレーズ、営業時間、電話番号・URL、地域名などを名前に入れない看板やウェブサイトと同じ医療機関名にする。「○○駅前 内科 土日診療」のような語を足さない
メインカテゴリビジネスに最も近いものを、できるだけ具体的に選ぶ主たる診療科に最も近いカテゴリを選ぶ
追加カテゴリ部門やサービスを示すために使う。中心となる事業内容を示すものを、できるだけ少なく実際に標榜している診療科の範囲にとどめる

カテゴリは独自に作れず、Googleが用意したものから選びます。追加カテゴリに、標榜していない診療科に近いものを入れると、ウェブサイトや看板の表示と食い違います。診療科名の表示は医療法第6条の6で定められた範囲に限られるため、カテゴリもそれと整合させます。

手順3:診療時間と休診日を合わせる

場面使う設定
通常の診療時間営業時間
午前・午後で受付時間が違う、検査の時間帯が決まっている営業時間の詳細(その他の営業時間)
祝日、年末年始、学会などによる一時的な変更や、連続6日までの休診特別営業時間
7日以上の休診臨時休業

Googleのヘルプでは、特別営業時間は一時的な変更や連続6日までの休業のときに使い、7日以上休むときは臨時休業にするとされています。年末年始やお盆の休診、学会による休診は、決まった時点で特別営業時間に入れておきます。ウェブサイト・院内掲示・電話の自動音声の案内と同じ日に更新するよう、担当者を決めておくと食い違いが起きにくくなります。

手順4:写真を入れる

Googleのヘルプによると、写真はJPGかPNG、10KB〜5MB、推奨は720×720ピクセル(最小250×250ピクセル)です。ピントが合った明るい写真を使い、大幅な加工や過度なフィルタは避けるよう求められています。動画は30秒まで、75MBまで、720p以上です。

クリニックで載せる写真は、外観、入口、駐車場、受付、待合室など、初めての患者が来院するときに迷わないためのものを優先します。患者や職員が写り込む写真は、本人の同意がない限り使いません。治療前後の写真は、医療広告の規制で、治療内容・費用・リスク・副作用の詳しい説明が同じ場所にない限り載せられないので、プロフィールには載せません。

手順5:電話番号・ウェブサイト・予約の導線を確かめる

電話番号は実際につながる代表番号にし、ウェブサイトのURLは自院の公式サイトにします。予約のリンクを設定する場合は、実際に使っている予約の仕組みと一致しているかを確かめます。


3. 口コミの依頼で禁止されていること

Googleのポリシー

Googleのマップのユーザー投稿コンテンツのポリシーは、次のものを禁止しています。

  • 金銭や物品の対価が払われた口コミ・評価
  • 口コミの投稿や、否定的な口コミの修正・削除と引き換えに、インセンティブを出すこと
  • 否定的な口コミを妨げたり禁止したりすること、肯定的な口コミを選んで募ること
  • 口コミを一定数集めるようスタッフに求めること、スタッフの名前を入れた口コミを募るよう求めること
  • 利益相反になるもの(現在・過去の職員、家族、競合などによる口コミ)

ビジネスプロフィールのヘルプでも、口コミと引き換えに無料や割引の商品・サービスなどを出すことは「虚偽のエンゲージメント」として固く禁じられています。「口コミを書いてくれたら次回の検査料を割り引く」「満足した方だけにお願いする」といった依頼は、これに当たります。

医療広告の規制

医療広告等ガイドライン第3-1は、第三者が運営する口コミサイトに載った体験談は、医療機関が広告料を負担するなどして掲載を頼んでいて誘引性がある場合を除き、広告に当たらないとしています。一方、Q&Aは医療機関の関与がある場合について次のように説明しています。

医療機関の関与Q&Aの扱い(要旨)
患者に肯定的な体験談の投稿を頼む有償か無償かにかかわらず誘引性が生じ、治療の内容や効果についての体験談は載せられなくなる
運営者に頼んで否定的な体験談を消す、肯定的なものを上に出す誘引性が生じる
そのように編集されたサイトの運営費を後から負担する誘引性が生じると考えられる

口コミを増やすための働きかけは、Googleのポリシーと医療広告の規制の両方に照らす必要があります。医院の側からの依頼は慎重に考え、行うとしても見返りを付けず、相手を選ばず、内容を誘導しない方法にとどめるのが、上の2つの資料から導かれる線です。

口コミを自院のサイトに転載しない

厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」は、口コミサイトの口コミを自院のウェブサイトにそのまま転載することを、体験談の広告として違反例に挙げています。都合のよいものだけを抜き出して載せると、誇大広告にも当たるとされています。Googleマップの評価の点数や口コミを、ウェブサイトやチラシに載せることも避けます。


4. 口コミへの返信の書き方

守秘義務に触れない

医師には刑法第134条の守秘義務があり、正当な理由なく業務上知った人の秘密を漏らすと、6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金の対象になります。口コミへの返信で、投稿者が来院したことや、診療の内容・検査の結果・会話の中身に触れると、その人が患者であることを医院の側から公にすることになりかねません。

Googleのヘルプも、否定的な口コミへの返信で投稿者の個人情報を出したり、個人を攻撃したりしないよう求めています。返信はGoogleのポリシーに沿っているかの審査を経て「企業からの返信」として表示され、通常は10分以内、長いと30日ほどかかるとされています。

返信の型

口コミの種類返信で書くこと書かないこと
肯定的な口コミ簡単なお礼診療の内容、症状、「○月○日にご来院の」などの特定につながる情報
待ち時間・電話・受付への不満お詫びと、医院として取り組んでいること(一般的な内容)個別の事情の説明、投稿者を特定した反論
診療内容への不満お詫びと、直接の問い合わせ窓口の案内診療の経過、投稿者の病状、医学的な反論
事実と異なる内容・ポリシー違反と思われるもの返信せず、Googleに報告することを検討する感情的な反論

Googleのヘルプでは、返信はわかりやすく、有益で、礼儀正しく書き、長すぎる返信は読まれにくいとされています。返信の文面は院長か事務長が確認してから出すようにし、担当者の判断だけで返信しない運用にしておくと安全です。

口コミを改善に使う

口コミは、待ち時間、電話のつながりやすさ、受付の説明のわかりやすさなど、院内では気づきにくい点を知る手がかりになります。月に一度、新しい口コミを読み、内容を「待ち時間」「電話」「受付・会計」「設備」「診療」などに分けて記録しておくと、同じ指摘が続いているかどうかが分かります。改善は口コミへの返信の中で約束するのではなく、院内の運用で行います。


5. 整えたあとの点検リスト

  • オーナー確認が済み、医院として管理するアカウントで管理している
  • 管理者が複数おり、退職者の権限が外れている
  • ビジネス名が看板・ウェブサイトと同じ正式名称で、余計な語が付いていない
  • カテゴリが実際に標榜している診療科の範囲に収まっている
  • 診療時間・受付時間がウェブサイトや院内掲示と一致している
  • 次の祝日・年末年始・学会の休診が特別営業時間に入っている
  • 写真に患者や職員の顔が同意なく写っていない
  • 説明文や投稿に、比較優良・誇大な表現、体験談、ビフォーアフター写真がない
  • 口コミの依頼に、見返り・選別・内容の誘導がない
  • 口コミへの返信に、来院の事実や診療の内容に触れる記述がない

6. 落とし穴

  • オーナー確認を業者のアカウントで行う:制作会社などのアカウントでオーナー確認をすると、契約が終わったときに医院の側で管理できなくなることがあります。医院のアカウントをオーナーにし、業者には管理者の権限を付ける形にします。
  • ビジネス名に語を足す:地域名や診療の特徴を名称に足すと、Googleのガイドラインに反し、看板やウェブサイトの表示とも食い違います。
  • 休診の反映を忘れる:特別営業時間の入力を忘れると、休診日に患者が来院してしまいます。休診を決めたときの手順に、Googleマップの更新を入れておきます。
  • 口コミの依頼を職員のノルマにする:口コミを一定数集めるようスタッフに求めることは、Googleのポリシーで禁止されています。
  • 返信で反論する:事実と違う内容でも、返信で経過を説明すれば守秘義務に触れるおそれがあります。ポリシー違反と思われる口コミはGoogleに報告する手段があります。

7. まとめ

  • Googleマップの表示は、オーナー確認をして医院で管理できる状態にすることから始める
  • 名称は正式名称のまま、カテゴリは標榜している診療科の範囲で、診療時間と休診日はウェブサイトと同じ日に更新する
  • 見返りを付けた口コミの依頼、選んで募ること、否定的な口コミを妨げることはGoogleのポリシーで禁止。医療機関が肯定的な体験談の投稿を頼むと誘引性が生じるとQ&Aは説明している
  • 口コミを自院のウェブサイトに転載することは違反例とされている
  • 返信では来院の事実や診療の内容に触れず、守秘義務(刑法第134条)を守る

Googleの設定の画面や仕様は変わることがあるため、操作の前にGoogleの公式ヘルプで最新の手順を確認してください。


参考資料