クリニックの内覧会(開院前に住民や地域の医療・介護関係者を招く見学会)は、厚生労働省の医療広告等ガイドラインに関するQ&Aで、実施に関する事項が広告可能と整理されています。「病院又は診療所の管理又は運営に関する事項」(医療法第6条の5第3項第10号)に当たるという扱いです。

一方で、この扱いが意味するのは「内覧会を開くこと・告知すること自体は広告できる」という点だけです。案内文やチラシに何を書けるかは、ほかの広告と同じルールに従います。 虚偽・誇大・比較優良な表現、患者の体験談は書けませんし、内覧会の時点ではまだ保険医療機関の指定を受けていないことが通常なので、診療をすでに提供しているかのような表現も避ける必要があります。

この記事では、厚生労働省の医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)とQ&A(令和8年3月改定)にもとづいて、内覧会の告知で押さえておく点を整理します。ウェブサイトでの広告の全体像は医療広告ガイドラインの要点で扱っています。


1. 内覧会の実施は広告してよいか

医療広告等ガイドラインに関するQ&AのQ3-8は、次のように整理しています。

いわゆる内覧会の実施に関する事項は、広告可能でしょうか。 開院前の医療機関の住民向けの説明会(いわゆる内覧会)の実施に関する事項については、「病院又は診療所の管理又は運営に関する事項」として、広告可能です。

医療法第6条の5第3項は、広告できる事項を第1号から第16号まで列挙しており、第10号が「病院又は診療所の管理又は運営に関する事項」です。内覧会の実施は、この号に含まれる事項として扱われます。

ここで確認できるのは「内覧会を開く旨を広告してよい」ということだけです。開院前であっても、医療機関に関する広告である以上、誘引性(受診等を誘う意図)と特定性(医療機関が特定できること)があれば、ほかの広告と同じ規制の対象になります。案内の中身まで自由になるわけではない点に注意してください。


2. 告知の方法と、それぞれにかかる規制

告知の方法自体に決まりはありませんが、どの方法を選んでも医療広告の規制はかかります。

告知の方法規制の考え方
チラシのポスティング、地域情報誌への折り込みフリーペーパーや紙媒体の広告も、医療法及び医療広告等ガイドラインによる広告規制の対象です(Q&A Q1-12)。不特定多数に配るため、限定解除(後述)は使えず、広告可能事項の範囲でだけ書けます
医療機関の外の看板・のぼり通行人が見る媒体であり、チラシと同じく限定解除は使えません
クリニックの公式ウェブサイトでの告知ページ患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトに当たるため、限定解除の要件(問い合わせ先の明示など4要件)を満たせば、広告できる事項の範囲を広げられます。ただし体験談や比較優良表現などの禁止は限定解除でも外れません
SNSの公式アカウントでの投稿クリニックの名称が分かり受診を誘引する投稿は医療広告の規制の対象です。SNSでの発信の注意点はクリニックのSNS運用で扱っています
近隣の医療機関・介護事業所への案内状誘引性・特定性があれば広告に当たります。開業のあいさつとして送る場合も、内容は広告可能事項の範囲にとどめます

複数の医療機関を紹介するパンフレットへの掲載についても、内容に誘引性・特定性があれば広告規制の対象になるとQ&AのQ1-14は整理しています。地域の商業施設に置いてもらう合同のチラシなどに載せる場合も、同じ考え方で確認してください。


3. 案内文・チラシに書いてよいこと/書けないこと

内覧会の案内で扱う内容は、ほとんどが医療法第6条の5第3項の広告可能事項に収まります。

書ける内容該当する号(医療法第6条の5第3項)
クリニックの名称、所在地、電話番号、管理者(院長)の氏名第3号
診療科名(広告可能な範囲のもの)第2号
開院予定日、診療日・診療時間第4号
内覧会の日時・場所・見学の申し込み方法第10号(管理又は運営に関する事項)
施設・設備の紹介(院内の写真を含む)第8号
医師の略歴(生年月日、出身校、学位、免許取得日、勤務歴など)第9号

一方、次のような表現は、内覧会の案内であっても書けません。これらはウェブサイトの広告でも禁止される表現と同じです(詳しくは医療広告ガイドラインの要点を参照)。

  • 「地域No.1」「最良の医療」のような比較優良広告
  • 「痛くない治療」「必ず改善」のような、根拠を示せない誇大・虚偽の表現
  • 治療の内容や効果についての体験談(内覧会に来場した人の感想を「患者の声」として使うことも含む)
  • 「当院に来れば必ず〇〇が受けられます」のように、診察の結果を待たずに特定の治療を約束する表現(Q&A Q2-7)
  • まだ保有していない医療機器の画像や、実施予定に過ぎない検査・治療を、確定した提供内容であるかのように書くこと

内覧会の時点では、通常はまだ保険医療機関の指定を受けておらず、保険診療を提供できる状態にありません。案内文やチラシで「ただいまより診療の予約を受け付けます」のように、診療をすでに開始しているかのような書き方をすると、実際の状態と食い違う広告になるおそれがあります。開院日と、内覧会がその前の見学会であることを、案内の中ではっきり分けて書いてください。


4. 記念品・ノベルティをめぐる注意

内覧会で来場者に記念品を配ることは、医療広告の規制そのものが禁じているわけではありません。厚生労働省の医療広告等ガイドラインとQ&Aには、記念品の内容や金額についての基準は示されておらず、確認できているのは内覧会の実施自体が広告可能という点だけです。

注意が必要なのは、記念品に印刷する文言です。クリニック名・ロゴ・所在地・電話番号・開院日を入れる程度であれば、広告可能事項の範囲に収まります。一方で、記念品のパッケージや添付のカードに治療の効果をうたう文言や、他院と比較して優れているとする文言を入れると、その部分は通常の広告と同じ規制の対象になります。記念品そのものより、そこに何を書くかを確認してください。


5. 内覧会の前後で確認しておきたいこと

内覧会の告知と並行して、患者が自分でクリニックを探す経路も整えておくと、開院後の集患につながります。

  • Googleビジネスプロフィール:オーナー確認には数営業日かかるため、内覧会より前に着手しておくと、開院時には整った状態にできます。手順はクリニックのGoogleマップの整え方で扱っています
  • クリニックのホームページ:基本情報に加えて、保険診療のルールで掲載が求められる事項(明細書の発行状況など)も開院までに用意します。クリニックのホームページに載せるべき情報を参照してください
  • 医療情報ネット(ナビイ):診療所の管理者は、開設後すぐに都道府県知事への新規報告が必要です。内覧会の時点ではまだ登録されていないため、案内文の中で「医療情報ネットに掲載中」のような表現は使えません。報告の流れは医療情報ネットの報告で扱っています

内覧会の案内、ホームページ、Googleマップ、医療情報ネットの4つで、名称・所在地・診療科目・診療時間が食い違わないようにしておくと、開院後の問い合わせで混乱が起きにくくなります。


6. 落とし穴

  • 内覧会の告知だからと油断して表現を緩める:開院前で患者がまだいないためか、「痛くない」「最新の設備で万全」といった表現が案内文に紛れ込みやすくなります。内覧会の告知も通常の広告と同じ規制を受けます
  • 来場者の感想を「患者の声」として使う:内覧会に来た人はまだ診療を受けていませんが、感想を治療の効果と結び付けて紹介すると、体験談の広告禁止に触れるおそれがあります
  • 保有していない設備を掲載する:発注済み・搬入予定の医療機器を、すでに稼働しているかのように書くと、事実と相違する広告になります(Q&A Q2-18も、保有していない医療機器の画像掲載を虚偽広告に当たるとしています)
  • 医療情報ネット掲載前に「掲載中」と書く:開設前は医療情報ネットにまだ情報がありません。報告と反映のタイミングを確認してから案内に書きます
  • 内覧会限定の割引や特典をうたう:自由診療の割引を含む案内は、費用を前面に押し出した表現として品位を損ねる広告に当たるおそれがあるほか、保険診療に関する内容であれば別の規制にも触れる可能性があります。慎重に確認してください

7. まとめ

  • 内覧会の実施に関する事項は、「病院又は診療所の管理又は運営に関する事項」として広告可能(医療法第6条の5第3項第10号、Q&A Q3-8)
  • 告知の方法(チラシ・看板・ウェブサイト・SNS)に決まりはないが、どの方法でも医療広告の規制はかかる。紙媒体や看板は限定解除が使えず、広告可能事項の範囲にとどめる
  • 案内文に書けるのは、名称・所在地・診療科名・診療日時・内覧会の日時・施設紹介・医師の略歴など。体験談・比較優良・誇大な表現、確定していない提供内容の記載はできない
  • 記念品の内容自体を定めた規制は確認できていない。記念品に入れる文言は、通常の広告と同じ基準で確認する
  • 開院前は保険医療機関の指定や医療情報ネットへの掲載が済んでいないことが多い。案内文で診療の提供をすでに始めているかのような表現は避ける

参考資料