診療所の採用面接では、選考のどこで時間がかかっているかを洗い出し、遅くとも翌営業日までに合否を連絡する体制を作ることが基本です。あわせて、職業安定法第5条の5に基づき、応募者の適性・能力に関係のない事項を聞かない運用も欠かせません。この記事では、選考を詰める組み方と、面接で聞いてよいこと・聞いてはいけないことを整理します。


1. 選考が遅れやすい3つの箇所

診療所の採用は、院長が診療の合間に対応することが多く、専任の人事担当者を置いている医院は多くありません。選考が長引くときは、次のどこかで止まっていることがほとんどです。

段階遅れが生じやすい理由
応募受付からの一次返信院長がメール・電話を確認するのが診療後になり、返信が翌日以降になる
面接日程の調整候補日を1つしか示さず、応募者の都合と合わなければ再調整になる
面接後の合否判断他の候補者と比べてから決めようとして、連絡が先延ばしになる

応募者は、同時に他の医療機関にも応募できます。どの段階が遅れているかを特定しないまま「早く返そう」と思っても、同じ場所で同じように遅れます。


2. その日のうちに返す選考の組み方

タイミングやること
応募を受けた当日受領の連絡と、面接の候補日(3つ以上)を同時に送る
面接当日院長が不在の時間帯でも、事務長・看護師長が一次対応できるようにしておく
面接の終わりその場で院内の関係者に合否の方向性を共有する(電話・チャットでも可)
遅くとも翌営業日合否を連絡する。不採用の場合も速やかに連絡する

特に効果があるのは、候補日を複数示すことと、面接官を院長以外にも置くことの2点です。院長しか面接できない体制だと、診療で手が離せない日は調整そのものが止まります。

採用する人数・曜日・時間帯を事前に決めておく準備段階については、クリニックの看護師の採用の採用の手順も参照してください。


3. 面接で聞いてよいこと・聞いてはいけないこと

求人者が求職者の個人情報を収集するときは、業務の目的の達成に必要な範囲内で行わなければならず(職業安定法第5条の5)、収集してはならない事項が指針(平成11年労働省告示第141号)で定められています。

区分収集してはならない事項の例
社会的差別の原因となるおそれがある事項人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地、家族の職業・収入・資産、住居の環境など
思想・信条に関する事項人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書、尊敬する人物など
労働組合への加入状況労働組合への加入の有無、学生運動など社会運動の経験

これらは、本人の適性・能力とは関係のない事項として、応募用紙に書かせることも、面接で尋ねることもできません。ただし、特別な職業上の必要性があり、収集目的を示したうえで本人から直接収集する場合は例外とされています。診療所の採用で例外に当たる場面は多くないため、原則として聞かない運用にするのが安全です。

雑談のつもりで家族構成や出身地を聞くことも、この指針の対象になります。面接官を複数置く場合は、聞いてよい事項を事前に共有しておくことが実務上の対策になります。


4. 面接で確認すべきこと

聞いてはいけない事項を避ける一方で、採用の判断に必要な事項は面接で確認します。

  • 保有資格(看護師・准看護師の免許証、医療事務の資格がある場合はその内容)は原本またはコピーで確認する
  • 勤務可能な曜日・時間帯、繁忙期の対応可否
  • 前職の退職理由のうち、業務内容や勤務条件に関わる部分(退職の経緯そのものを執拗に掘り下げない)
  • 診療所での勤務経験がある場合は、担当していた業務の範囲

内定後に書面で明示する労働条件の項目(業務内容、契約期間、就業時間、賃金など)は、職業安定法第5条の3に基づくもので、クリニックの看護師の採用にまとめています。面接までにこれらの項目を明示する準備をしておくと、内定から入職までの手続きも滞りません。


5. 実行時の落とし穴

  • 雑談のつもりで家族構成や出身地を聞く。 悪意がなくても、指針が定める収集してはならない事項に当たります。
  • 面接の候補日を1つしか示さない。 応募者の都合と合わなければ、そこで調整が止まります。
  • 「追って連絡します」のまま結果を伝えない。 不採用の場合も、連絡をしないまま放置しない運用にします。
  • 院長しか面接できない体制にする。 診療で手が離せない日は、選考全体が止まります。
  • 内定後の労働条件の明示が漏れる。 面接で確認した内容と、書面で明示する内容にずれがないか確認します。

まとめ

  • 診療所の採用面接は、応募受付・面接日程の調整・合否判断のどこで遅れているかをまず特定する
  • 候補日を複数示す、面接官を院長以外にも置くことで、遅くとも翌営業日までの合否連絡を実現しやすくなる
  • 面接で聞いてよい事項・聞いてはいけない事項は、職業安定法第5条の5と指針(平成11年労働省告示第141号)に定められている
  • 本籍・思想信条・家族の状況など、適性・能力に関係のない事項は原則として聞かない
  • 内定後に明示する労働条件の項目は、面接前に準備しておく

参考資料