クリニックの予約システムは、大きく順番予約(受付順に近い形で番号を発行する)と時間予約(診療時間そのものを割り当てる)の2つの仕組みに分かれます。どちらが向いているかは、診療科や患者層によって変わります。
この記事では、2つの仕組みの違い、システムを選ぶときに確かめるべき機能、予約料を選定療養として徴収する場合の届出について整理します。
順番予約と時間予約の違い
| 項目 | 順番予約 | 時間予約 |
|---|---|---|
| 仕組み | 受付順に近い形で番号を発行し、順番が近づいたら来院してもらう | 診療時間そのものを患者ごとに割り当てる |
| 向いている診療科 | 内科、小児科など、症状によって診察時間が変わりやすい科 | 予防接種、健診、専門外来など、1件あたりの診療時間が一定な診療内容 |
| 患者の待ち方 | 順番が近づくまで、院外・自宅などで待つことができる | 予約した時間に来院すれば、待ち時間が比較的短い |
| 運用の難しさ | 診察時間が延びると、後の順番の見通しが崩れやすい | 診察が予定より延びると、後の予約者の待ち時間が積み重なる |
初診は時間予約、再診は順番予約にするなど、診療内容によって2つの仕組みを組み合わせて運用しているクリニックもあります。自院の診療内容がどちらの仕組みに合うかを、まず整理してください。
予約システムを選ぶときに確かめる機能
予約システムを選ぶ際は、次の機能を確認します。
- 経路の一元管理:電話・窓口・オンラインのどの経路からの予約も、同じシステムで管理できるか
- 患者自身での変更・キャンセル:患者がオンラインで予約の変更・キャンセルをできるか(電話での対応件数を減らせる)
- リマインドの通知:予約日が近づいたときに、メールやSMSで知らせる機能があるか(無断キャンセルの防止につながる)
- 既存システムとの連携:電子カルテやレセプトコンピュータと連携できるか
連携ができないシステムを選ぶと、予約システムとカルテの情報を別々に管理することになり、受付の負担がむしろ増えることがあります。導入前に、いま使っている電子カルテ・レセコンとの連携実績があるかを確認してください。
システムの費用も、初期費用と月額費用に分けて比較します。予約件数に応じた従量課金のシステムもあれば、患者数に関わらず一定額のシステムもあります。診療科・患者数の規模に合わせて、どちらの課金方式が合うかも確認してください。
予約料を選定療養として徴収する場合
保険診療を行うクリニックでも、一定の要件を満たせば、予約に基づく診察について患者から予約料を受け取ることができます。これは「選定療養」という保険外併用療養費の制度の一つで、次の手続きが必要です。
- 地方厚生局への届出:「予約に基づく診察」を選定療養として実施する旨を届け出る
- 院内掲示:予約料の額とその内容を院内に掲示する
- 患者への説明と同意:予約時に、予約料がかかることをあらかじめ説明し、同意を得る
予約料の額に法令上の上限はありませんが、社会的にみて妥当な範囲であることが求められます。 届出をしていない医療機関は、保険診療の中で予約料を受け取ることはできません。
届出をしていないにもかかわらず「予約料」「キャンセル料」といった名目で費用を受け取ることは、保険診療のルールに反します。予約料の導入を検討する場合は、まず地方厚生局の窓口に、自院の診療形態でこの選定療養の届出ができるかを確認することから始めてください。届出の要否や具体的な提出書類は、地方厚生局ごとに案内が異なることがあります。
キャンセル料の取扱い(令和8年の通知改正)
令和8年3月27日の保医発通知の改正で、患者から費用を徴収できる項目に予約キャンセル料などが追加されました。ただし、同年5月29日の訂正により、キャンセル料を徴収できるのは、選定療養として予約料を届け出ている医療機関の予約診療に限られることが明確にされています。予約料の届出をしていない通常の保険診療の予約について、キャンセル料を徴収することはできません。予約料・キャンセル料の導入を検討する場合は、この区別を踏まえて、地方厚生局への届出から進めてください。
導入・見直しの進め方
- 診療内容ごとに、順番予約と時間予約のどちらが向いているかを整理する
- 電話・窓口・オンラインの予約経路と、既存の電子カルテ・レセコンとの連携要件を書き出す
- 予約料の導入を検討する場合は、選定療養の届出の要否を地方厚生局に確認する
- 候補のシステムについて、連携実績とサポート体制を比較する
- 導入後、電話での予約件数がどう変化したかを確認する
実行時につまずきやすいところ
診療科の実情を考えずに、他院の評判だけでシステムを選ぶ。 順番予約が向くクリニックに時間予約のシステムを入れると、診察が延びるたびに後の予約がすべてずれてしまいます。自院の診療内容に合う仕組みかどうかを先に確認してください。
予約料を、届出をせずに受け取ってしまう。 予約料もキャンセル料も、選定療養としての届出が前提です。届出をしていない状態で費用を受け取ると、保険診療のルールに反することになります。
システムを導入しただけで、患者への周知が不十分。 オンライン予約の機能を導入しても、患者に使い方が伝わっていなければ、電話での予約対応は減りません。
電話対応そのものの改善は「電話がつながらない医院を直す|一次受けと予約の仕組み」で整理しています。
参考資料
- 厚生労働省保険局「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」の一部改正(令和8年3月27日 保医発0327第7号)および同年5月29日の訂正・疑義解釈
- 社会保険研究所「予約キャンセル料が徴収可能なのは選定療養の予約のみ」(2026年5月29日):https://media.shaho.co.jp/n/n13c18977f193
- 長野県保険医協会「予約のキャンセル料は選定療養に限ると厚労省が訂正通知」:https://nagano-hok.com/shaho/19212.html