待ち時間を減らすには、まず自院の待ち時間を工程ごとに測り、長い工程から手を打つのが近道です。受付・問診・診察待ち・診察・会計待ちのどこで患者が待っているかによって、効く手がまったく違うからです。

待ち時間への不満は、外来で最も多い不満です。厚生労働省の受療行動調査(令和5年、一般病院の外来)では、不満の項目で最も多かったのが「診察までの待ち時間」(25.5%)でした。ただし、この調査は一般病院が対象で、診療所の待ち時間の公的なデータはありません。自院の実測が、唯一の基準になります。

この記事では、自院の待ち時間の測り方と、予約・問診・会計の見直しの手順、予約料を取る場合に令和8年6月1日から適用されるルールを整理します。


1. 公的なデータで分かること・分からないこと

受療行動調査(令和5年)

受療行動調査は、全国の一般病院を利用する患者を対象に、3年ごとに行われる調査です。令和5年の調査(確定数、令和7年3月14日公表)は488施設、外来の有効回答70,376人でした。

項目結果(一般病院の外来)
予約をした患者の割合79.4%
待ち時間15分未満27.8%
待ち時間15分〜30分未満24.8%
待ち時間30分〜1時間未満20.6%
診察時間5分〜10分未満40.9%
診察時間5分未満28.1%
不満の項目で最も多いもの診察までの待ち時間(25.5%)

待ち時間は1時間未満が約7割、診察時間は10分未満が約7割です。待つ時間に比べて診察の時間が短いことが、不満の背景にあると読み取れます。なお、調査方法の変更があるため、過去の調査との比較には注意が必要とされています。

診療所のデータは無い

受療行動調査は診療所を対象にしていません。令和8年の調査(10月20日〜22日のいずれか1日)も一般病院が対象です。「診療所の平均の待ち時間」として出回っている数字は、公的な統計にもとづくものではありません。他院と比べるより、自院の先月と今月を比べるほうが確かです。


2. 自院の待ち時間の測り方

記録する時刻

1〜2週間、次の時刻を記録します。予約システムや電子カルテ、レセプトコンピュータに記録が残るものは、そこから取り出します。

時刻取れる場所の例
① 受付の時刻受付の記録、再来受付機
② 問診が終わった時刻問診票の受け取り、Web問診の送信時刻
③ 診察室に呼び込んだ時刻電子カルテの記録開始、呼び出しの記録
④ 診察が終わった時刻電子カルテの記録終了
⑤ 会計が終わった時刻レセプトコンピュータの会計の時刻

見る数字

  • ①→③(診察までの待ち時間):患者の不満の中心です
  • ④→⑤(会計待ち):診察が終わってからの待ちは、患者にとって長く感じやすい工程です
  • 曜日・時間帯ごとの分布:平均ではなく、混む時間帯の待ち時間を見ます
  • 予約患者と予約外の患者の違い:予約の効果を確かめます

記録は、どの工程で待っているかを知るためのもので、職員を評価するためのものではありません。その趣旨を職員に説明してから始めます。


3. 工程ごとの見直し

予約

見直すこと内容
予約の枠の幅実際の診察時間の分布に合わせる。初診と再診で枠を分ける
予約外の患者の受け入れ予約外の枠を時間帯ごとに確保し、予約患者の待ちを崩さない
混む時間帯の分散曜日・時間帯ごとの混み具合を院内とウェブサイトで案内する
電話予約の負担Web予約を併用し、受付の電話を減らす

予約の方法や受付時間、混み具合の目安は、患者が来院前に見る情報です。ウェブサイトへの載せ方はクリニックのホームページに載せるべき情報で、Googleマップの営業時間の整え方はクリニックのGoogleマップの整え方で扱っています。

問診

  • 来院前の問診:Web問診を使うと、受付後に紙の問診票を書く時間が減ります。紙の問診票も残し、使えない患者に対応します
  • 問診の内容の事前確認:診察前に問診の内容を医師や看護師が見られるようにすると、診察室での聞き取りが短くなります
  • 検査の先行:必要な検査を診察前に済ませる運用ができるかを、院内で決めておきます

受付・資格確認

受付でマイナ保険証の読み取りにつまずくと、その後ろの患者がすべて待ちます。エラー時の手順を決めておくことが、待ち時間の対策にもなります。手順はオンライン資格確認とマイナ保険証の窓口対応で整理しています。

会計

  • 会計の計算の開始を早める:診察が終わってから計算を始めるのではなく、電子カルテの記録からすぐに会計に回る流れにします
  • 支払い方法:自動精算機やキャッシュレス決済の導入は、会計の窓口の混雑を減らす手段の1つです
  • 領収証と明細書:保険医療機関は、個別の費用ごとに区分した領収証を無償で交付しなければなりません(療養担当規則第5条の2)。明細書の交付も同条で定められています。会計を速くするために、交付を省くことはできません

診察そのもの

診察時間を削って待ち時間を減らすことは、本末転倒になりかねません。医師でなくてもできる説明や書類の作業を、看護師や医療事務に分担できるかを見直します。


4. 予約料を取る場合のルール(令和8年6月から)

予約に基づく診察に特別の料金(予約料)を取ることは、選定療養として認められています。令和8年3月27日の通知(保医発0327第6号)で取り扱いが見直され、令和8年6月1日から適用されています。

項目取り扱い
対象対面の診療に限る。オンライン診療では予約料を取れない
待たせた場合予約時刻からおおむね30分以上待たせた場合は、予約料を取らない
予約料を取らない時間診療科ごとに、外来の延べ診療時間のおおむね2割以上を確保する
予約外の患者おおむね2時間以上待たせないようにする
予約患者の診察1人あたりおおむね10分以上を目安とし、医師1人1日おおむね40人を限度とする
掲示と説明院内に掲示し、受付で説明する。原則としてウェブサイトにも掲載する
報告料金を定めたら、地方厚生局長に報告する

予約料を取るかどうかにかかわらず、予約時刻からの待ち時間を記録しておくと、この取り扱いを守れているかを確かめられます。


5. オンライン診療という選択肢

再診の一部をオンライン診療で受けると、院内の待合の混雑が減ることがあります。オンライン診療の適切な実施に関する指針は令和8年4月に改訂され(医政発0402第3号)、オンライン診療を行う医療機関は都道府県への届出が必要になりました。すでに実施している医療機関は令和9年3月末までに届け出ます。対象になる患者と診療内容は指針で確かめてから検討します。


6. 見直しの進め方

  1. 1〜2週間、工程ごとの時刻を記録する
  2. 待ち時間の長い工程と時間帯を特定する
  3. その工程の見直しを1つだけ決めて試す(例:会計の計算を診察の終了と同時に始める)
  4. 同じ方法でもう一度記録し、前と比べる
  5. 効いたものを手順書にして職員で共有する
  6. 院内掲示とウェブサイトの案内(予約方法・混む時間帯)を更新する

一度に多くを変えると、何が効いたか分からなくなります。1つずつ試します。


7. チェックリスト

  • 受付・呼び込み・診察終了・会計終了の時刻を記録できる
  • 曜日・時間帯ごとの待ち時間の分布を見ている
  • 予約の枠の幅が、実際の診察時間の分布に合っている
  • 予約外の患者の受け入れ方を決めている
  • 問診の内容を診察前に見られる
  • マイナ保険証のエラー時の手順が受付にある
  • 会計の計算を診察の終了からすぐに始められる
  • 領収証を無償で交付している
  • 予約料を取る場合、掲示・説明・ウェブサイト・地方厚生局への報告を済ませている
  • 混む時間帯を院内とウェブサイトで案内している

8. 落とし穴

  • 他院や「平均」の数字と比べる:診療所の待ち時間の公的なデータはありません。自院の前後で比べます。
  • 平均だけを見る:混む時間帯の長い待ちが不満の原因になります。分布を見ます。
  • 予約の枠を詰めすぎる:枠が実際の診察時間より短いと、午前の後半から待ちが積み上がります。
  • 予約料のルールを旧のまま運用する:令和8年6月から、30分以上待たせた場合の扱いや、予約料を取らない時間の確保などが定められています。
  • 会計を速くするために領収証を省く:領収証の無償交付は義務です。

9. まとめ

  • 外来の不満で最も多いのは診察までの待ち時間(受療行動調査、一般病院)。診療所の公的なデータは無い
  • 自院の待ち時間を工程ごとに測り、長い工程から1つずつ見直す
  • 予約の枠、予約外の受け入れ、問診の前倒し、資格確認のエラー対応、会計の開始の早さが主な見直しどころ
  • 予約料を取る場合は、令和8年6月1日からの新しい取り扱い(30分以上待たせたら取らない等)に従う
  • 領収証の無償交付は療養担当規則の義務

参考資料