令和8年度診療報酬改定は、診療報酬本体+3.09%(令和8年度・9年度の2年平均)、令和8年6月1日施行です。診療所が確かめるべき変更は、大きく4つあります。再診料が75点から76点に上がったこと外来・在宅物価対応料が新設されたこと医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算が廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算が新設されたこと、そして外来・在宅ベースアップ評価料の対象職員と手続きが変わったことです。

改定では、点数が変わるだけでなく、新設の項目の届出、名称が変わった項目の掲示の書き換え、経過措置の期限の管理が必要になります。令和8年度改定では、令和9年6月1日以降の算定に届出が要る経過措置もあります。

この記事では、厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)と通知、中央社会保険医療協議会(中医協)の資料にもとづいて、診療所が確かめることを整理します。施設基準の届出の手続きそのものは施設基準の届出の流れと注意点で扱っています。


1. 改定の全体像

改定率

令和7年12月24日の大臣折衝事項による改定率は次のとおりです。

区分改定率施行
診療報酬本体+3.09%(2年平均。令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%)令和8年6月
薬価▲0.86%令和8年4月
材料価格▲0.01%令和8年6月

本体の内訳は、賃上げ分+1.70%、物価対応分+0.76%、食費・光熱水費分+0.09%、経営環境の悪化への緊急対応分+0.44%、適正化▲0.15%、その他+0.25%です。その他の部分の各科の配分は、医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%とされています。令和8年度と9年度で改定率が違うため、令和9年6月にも点数が変わる項目があります。

日程

日付内容
令和7年12月9日改定の基本方針
令和8年2月13日中医協の答申
令和8年3月5日告示(第69号)と主な通知(留意事項通知 保医発0305第6号、施設基準の通知 同第7号・第8号など)
令和8年3月23日疑義解釈資料(その1)
令和8年5月7日〜6月1日6月1日から算定するための施設基準の届出の期間
令和8年6月1日施行
令和8年9月2日疑義解釈資料(その12)。2026年9月時点で確認できた最新

6月施行になった理由

6月施行は令和6年度改定から始まりました。中医協の資料(総-3「医療DXについて(その2)」令和5年8月2日)では、答申や告示から施行・初回請求までの期間が短く、医療機関とベンダの業務がひっ迫していたことを背景に、業務の負荷をならすために6月1日施行とし、薬価改定は4月1日のままとする案が示されました。同じ資料には、6月施行の場合、経過措置は9月末を基本とするという記載もあります。


2. 診療所に関係の大きい点数の変更

点数は告示の点数表(別表第一)で確かめたものです。

初診料・再診料と物価対応料

項目改定前改定後
初診料291点291点(据え置き)
再診料75点76点
外来管理加算52点52点

外来・在宅物価対応料が新設されました。令和8年度は初診時2点・再診時等2点・訪問診療時3点で、令和9年度はそれぞれ4点・4点・6点になると概要資料に示されています。

医療DXの評価の組み替え

医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算が新設されました。

区分点数
初診時(月1回)加算115点
初診時(月1回)加算29点
初診時(月1回)加算34点
再診時(月1回)2点

加算3の要件には、オンライン請求を行っていること、明細書を無償で交付していること、オンライン資格確認の体制があること、マイナ保険証の利用率が30%以上であること、明細書の発行や医療DXの体制について院内の見やすい場所とウェブサイトに掲示していることなどがあります。加算1・2は、これに電子処方箋・電子カルテ・電子カルテ情報共有サービスなどの要件が加わります。診療所の再診料にある明細書発行体制等加算(1点)とは、同時に算定できません。

新設の項目なので、算定するには施設基準の届出が必要です。旧加算を届け出ていたから算定できる、という扱いにはなりません。

時間外対応加算の名称と点数

時間外対応加算は時間外対応体制加算に名称が変わり、点数が上がりました。

区分改定前改定後
15点7点
24点5点
33点4点
41点2点

令和8年5月31日に算定していて引き続き算定する場合は、新しい届出は要りません。ただし、院内掲示やウェブサイト、患者向けの案内に古い名称が残っていないかは確かめます。

機能強化加算

機能強化加算は80点で据え置きですが、業務継続計画(BCP)の策定と定期的な見直しが新しい要件になりました。外来・在宅データ提出加算の届出は「望ましい」とされています。改定前から届け出ている診療所は、令和9年6月1日以降も算定するなら届出が必要です。

また、地域で不足する医療機能の提供を求められたのに応じず、保険医療機関の指定を3年以内の期限付きにされた医療機関は、機能強化加算・地域包括診療加算などを算定できず、在宅療養支援診療所の届出もできなくなりました。

外来感染対策向上加算

外来感染対策向上加算は月1回6点で、発熱患者等対応加算20点、連携強化加算3点、サーベイランス強化加算1点、抗菌薬適正使用体制加算5点です(告示の初診料の注11〜14、再診料の注15〜18)。

生活習慣病管理料

区分点数
生活習慣病管理料(Ⅰ)脂質異常症610点
生活習慣病管理料(Ⅰ)高血圧症660点
生活習慣病管理料(Ⅰ)糖尿病760点
生活習慣病管理料(Ⅱ)333点

主な見直しは、包括する範囲の見直し、(Ⅰ)で原則として血液検査などを少なくとも6か月に1回行うことの要件化、療養計画書への患者の署名が不要になったこと、眼科医療機関連携強化加算と歯科医療機関連携強化加算(各60点・年1回)の新設、充実管理加算1・2(届出が必要)の新設です。療養計画書の様式や院内の手順を、署名を前提にしたまま運用していないか確かめます。

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)

対象職員が広がり、事務職員や40歳未満の医師も含まれるようになりました(経営者と役員は除く)。

期間初診時再診時等訪問診療時
令和8年6月〜令和9年5月17点4点79点または19点
同(継続して賃上げに取り組んだ医療機関、注5)23点6点107点または26点
令和9年6月以降(注5)40点10点186点または45点

令和9年6月以降は、通常の分も2倍になるとされています。手続きも変わり、賃金改善計画書は作らなくてよくなり、毎年8月に「賃金改善中間報告書」、翌年8月に「賃金改善実績報告書」を出す形になりました。令和8年度から続けて算定する場合、令和9年度の届出書は要らないとされています。

オンライン診療

情報通信機器を用いた診療の施設基準が見直され、チェックリストのウェブサイトへの掲示などが加わりました。この見直しは、新たな届出の要らない改正とされています。


3. 療養担当規則などの改正

令和8年6月1日施行の保険医療機関及び保険医療養担当規則の改正で、医療機関が患者に特定の事業者を使うよう指示する見返りに、その事業者から金品などの財産上の利益を受け取ることが禁止されました(保医発0305第5号)。

明細書の交付について定めた通知も、令和8年3月5日付けの保発0305第18号に改められました。明細書は原則として無償で交付し、発行状況に関する院内掲示の事項は原則としてウェブサイトにも掲載します。レセプトコンピュータに発行機能が無いなどの「正当な理由」は、令和10年以降の標準型レセプトコンピュータの提供の時期をめどに廃止する予定とされています。


4. 改定の年に診療所がやること

施行前(2月〜5月)

  1. 答申と告示の内容を、自院の算定項目に当てはめる:自院が算定している項目の一覧を作り、点数・要件・名称の変更を書き込みます。
  2. 届出の要否を確かめる:新設の項目、施設基準が改正された項目は届出が必要です。名称だけ変わった項目は不要です。厚生労働省は医科診療所向けのチェックリストを公表しています。
  3. 届出の期間に出す:令和8年度改定では、5月7日から6月1日(必着)の届出で6月1日から算定できました。電子申請のIDは早めに取っておきます。
  4. レセプトコンピュータと電子カルテの更新を確かめる:ベンダの更新の日程と、点数マスタの反映を確かめます。

施行後(6月〜9月)

  1. 院内掲示とウェブサイトを直す:廃止された加算の掲示を外し、新設の加算や名称の変わった加算の掲示に書き換えます。ウェブサイトへの掲載が要件の加算は、掲載を確かめます。
  2. 初回のレセプトを点検する:6月診療分の請求で、新しい点数と加算が正しく算定されているかを確かめます。
  3. 疑義解釈資料を追う:疑義解釈資料は施行後も出続けます。令和8年度改定では、9月2日のその12まで出ています。
  4. 8月の報告に備える:定例報告と、ベースアップ評価料の賃金改善中間報告書は8月です。

次の改定まで

  1. 経過措置の期限を管理する:機能強化加算、処置の休日加算1・時間外加算1・深夜加算1、在宅療養支援診療所など、令和9年6月1日以降の算定に届出が要る項目があります。
  2. 令和9年6月の点数の変更に備える:物価対応料とベースアップ評価料は、令和9年度に点数が変わります。

5. 自院の確認表

確認すること対象
再診料76点、物価対応料がレセプトコンピュータに反映されている全診療所
電子的診療情報連携体制整備加算の区分を決め、届け出た旧医療DX推進体制整備加算を算定していた診療所など
マイナ保険証の利用率を確かめている(加算3は30%以上)同上
時間外対応体制加算の名称で掲示を直した旧時間外対応加算を算定していた診療所
機能強化加算のBCPを作り、期限までに届け出る予定を立てた機能強化加算を算定している診療所
生活習慣病管理料の療養計画書の運用を見直した生活習慣病管理料を算定している診療所
ベースアップ評価料の対象職員に事務職員を含めて計算したベースアップ評価料を算定している診療所
明細書の発行状況をウェブサイトに掲載している自ら管理するホームページのある診療所

6. 落とし穴

  • 旧加算の届出で新加算を算定する:電子的診療情報連携体制整備加算は新設の項目で、届出が必要です。
  • 名称変更の項目を届け直す:時間外対応体制加算のように名称だけ変わった項目は、届出が要りません。届け直すと受理の日の扱いで混乱することがあります。
  • ウェブサイトの掲示事項を放置する:院内掲示だけ直してウェブサイトに古い加算名が残る例があります。ホームページに載せる事項の整理はクリニックのホームページに載せるべき情報を参照してください。
  • 令和9年6月を忘れる:令和8年度改定は2年分の改定率を前提にしており、令和9年6月に点数が変わる項目と、届出が要る経過措置があります。
  • 概要資料だけで判断する:概要資料は、詳細は告示・通知で確かめるよう書いています。算定の判断は告示・留意事項通知・疑義解釈資料で行います。

7. まとめ

  • 令和8年度改定は本体+3.09%(2年平均)、令和8年6月1日施行。薬価は4月に▲0.86%
  • 再診料は76点に。外来・在宅物価対応料が新設され、令和9年度に点数が上がる
  • 医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は廃止。電子的診療情報連携体制整備加算が新設され、届出が必要
  • 時間外対応加算は時間外対応体制加算に名称が変わり点数が上がった。届出は不要
  • 機能強化加算はBCPが要件に加わり、令和9年6月1日以降の算定には届出が必要
  • ベースアップ評価料は対象職員に事務職員などが加わり、計画書が不要になった

個別の算定の可否は、告示・通知・疑義解釈資料で確かめ、判断に迷う場合は管轄の地方厚生局に確認してください。


参考資料