オンライン診療を始めるときに押さえることは、2026年4月から大きく変わりました。医療法の改正でオンライン診療が法律上の「診療」として定義され、これまで指針で示されていた「最低限遵守する事項」が、医療法施行規則のオンライン診療基準に引き上げられました(令和8年3月27日 医政発0327第5号)。違反には、都道府県知事等による立入検査や是正命令があり得ます。

診療所が始めるには、次の3つをそろえます。

  1. 医療法の手続き: 勤務する医師がオンライン診療を行うことを、都道府県知事等に届け出る
  2. 診療の体制: オンライン診療基準と指針(令和8年4月改訂)に沿った体制を作り、医師に研修を受けさせる
  3. 保険診療の手続き: 情報通信機器を用いた診療の施設基準を地方厚生局に届け出て、ウェブサイトに必要な掲示をする

この記事では、厚生労働省の施行通知、指針とその改訂の概要、令和8年度診療報酬改定の告示・通知・疑義解釈にもとづいて、それぞれの要件と手順を整理します。


1. 2026年4月からの仕組み

医療法での位置づけ

改正後の医療法第2条の2は、オンライン診療を、医師と遠隔の地にいる患者が、映像と音声の送受信で相手の状態を相互に認識しながら通話できる方法による診療と定義しています。電話だけのやりとりは、この定義に当たりません。

施行通知によると、改正のポイントは次のとおりです。

  • オンライン診療基準: オンライン診療を行う医療機関の施設・人員、患者がオンライン診療を受ける場所、患者への説明、急変時の体制などを省令で定め、オンライン診療はこれに従って行わなければならない(医療法第14条の3、医療法施行規則第9条の6の3〜第9条の6の19)
  • 管理者の責任: 診療所の管理者は、基準に沿ったオンライン診療が行われるよう、医師に厚生労働省の「オンライン診療を行う医師向けの研修」を受講させるなどの措置を講じる(同法第14条の4)
  • オンライン診療受診施設: 郵便局や公民館などを、患者がオンライン診療を受ける場所として届け出て設置できる新しい施設類型ができた
  • 自由診療も対象: 報告徴収・立入検査・是正命令は、自由診療のオンライン診療にも及ぶ

指針の役割

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は令和8年4月に改訂され、医療法の改正に合わせて整えられました。指針は引き続き、「最低限遵守する事項」と「推奨される事項」を示す実務の手引きです。保険診療の施設基準も、この指針に沿って診療を行う体制を求めています。


2. 判断材料:何をそろえるか

区分何をするか提出・掲示先根拠
医療法の届出勤務する医師がオンライン診療を行う旨を届け出る(変更も10日以内)都道府県知事等(保健所設置市・特別区を含む)医療法施行規則第3条・第4条
医師の研修厚生労働省の「オンライン診療を行う医師向けの研修」(e-learning)を受講させる―医療法第14条の4、指針
指針遵守の公表指針を守ってオンライン診療を行っている旨を公表するウェブサイト・院内掲示指針
施設基準の届出情報通信機器を用いた診療の届出(様式1)地方厚生局基本診療料の施設基準の通知
ウェブサイトの掲示初診で向精神薬を処方しないこと、医療機関向けチェックリスト自院のウェブサイト同上
薬剤情報の確認向精神薬の処方時に電子処方箋管理サービスの重複投薬等チェックを使う―同上

医療法の届出の経過措置

施行通知によると、令和8年4月1日時点で既にオンライン診療を行っていた診療所は、令和9年3月31日までは変更の届出を要しないとされています。医療機能情報提供制度の定期報告(毎年1月1日〜3月31日のうち都道府県が定める期間に、G-MISで行う)と同じ時期に届け出ることが考えられる、と通知は示しています。これから始める診療所は、始めた時点で届出が必要です。様式や受付の窓口は、所在地の保健所で確かめてください。

施設基準の要件

基本診療料の施設基準の通知(保医発0305第7号)の第1は、情報通信機器を用いた診療の体制として、次を求めています。

  • 医療機関の外で診療することを想定する場合は、実施場所が指針に該当し、事後に確認できること
  • 対面診療を提供できる体制があること
  • 自院で対面診療が難しいときに、他の医療機関と連携して対応できること
  • 自院のウェブサイトに、初診のオンライン診療で向精神薬を処方しないことと、対応状況を記入したチェックリストを掲示すること
  • 医療広告ガイドラインを守ること。ウェブサイトは「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」を参考に作ること
  • 向精神薬を処方するときは、電子処方箋管理サービスの重複投薬等チェックを使うこと。電子処方箋を導入していない場合は、令和10年5月31日までに限り、オンライン資格確認等システムなどで薬剤情報を確かめることで代えられる

掲示するチェックリストについて、疑義解釈資料(その4)問17は、施行通知の別添3「(医療機関向け)基準等遵守の確認をするためのチェックリスト」を指すとしています。以前の版のチェックリストを掲示している診療所は、差し替えが必要です。なお、施設基準の通知は、この施設基準を「施設基準が改正されたが届出を必要としないもの」に挙げており、既に届け出ている診療所が改めて届け出る必要はありません。

ウェブサイトの作り方はクリニックのホームページに載せる情報、広告の決まりは医療広告ガイドラインの要点で扱っています。


3. 初診と処方の条件

初診からのオンライン診療

指針は、初診からのオンライン診療は、原則として日頃から対面診療を重ねている「かかりつけの医師」が行うとしています。それ以外でも、次の場合は実施できます。

  • 既往歴・服薬歴・アレルギー歴などを、過去の診療録、診療情報提供書、健診結果、お薬手帳などで把握でき、医師が可能と判断した場合(把握した情報は診療録に記載)
  • 映像を用いたリアルタイムの診療前相談で、医師が症状と医学的情報を確かめ、医師と患者が合意した場合

診療前相談は、診断や処方を含まない行為です。結果としてオンライン診療に至らない場合があることや費用について、ウェブサイトなどで事前に示しておく必要があります。令和8年4月の改訂では、医療法でオンライン診療が診療と定義されたことに合わせ、診療前相談が指針の対象であることが明確にされました。

処方の制限

疑義解釈資料(その4)問16は、医療法施行規則第9条の6の13第3項により、初診で対面診療を経ていない場合は、麻薬・向精神薬を処方してはならないことを示し、初診も再診もオンラインで行った患者には向精神薬を処方できないとしています。

指針は、初診のオンライン診療で、基礎疾患などの情報を把握できていない患者に、特に安全管理が必要な薬品を処方することや、8日分以上を処方することも行わないとしています。処方の際は、日本医学会連合の「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」などを踏まえます。

本人確認

指針は、初診のオンライン診療では、原則として顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)で本人確認を行うとしています。令和8年4月の改訂で、確認書類の例から健康保険証が削られ、医療保険者が発行する資格確認書が加わりました。


4. 算定の要点

令和8年度の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)で、施設基準を届け出た医療機関が情報通信機器を用いて初診を行った場合、初診料は253点(対面は291点)です。再診料(76点)は、届け出た医療機関が情報通信機器を用いて再診を行った場合も算定できます。医学管理料の多くにも、情報通信機器を用いた場合の点数が別に定められています。例えば生活習慣病管理料(Ⅱ)は290点です(詳しくは生活習慣病管理料の算定要件)。

留意事項通知(保医発0305第6号)は、情報通信機器を用いた診療について、次の扱いを定めています。

  • 指針に沿って行った場合に算定する。診療内容、診療日、診療時間などの要点を診療録に記載する
  • 原則として、医療機関に所属する保険医が医療機関内で行う。医療機関外で行う場合も、実施場所は事後に確認できる場所であること
  • 急変時は原則として自院が対応する。夜間・休日などやむを得ず対応できない場合は、受診できる医療機関を事前に患者に説明し、かかりつけの医師の所属先、またはいない場合は紹介先・紹介方法・患者の同意を診療録に記載する
  • 日本医学会連合の「オンライン診療の初診に適さない症状」などを踏まえ、指針に沿った適切な診療・処方であることを診療録とレセプトの摘要欄に記載する
  • 予約に基づく診察による特別の料金は徴収できない。情報通信機器の運用に要する費用は、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として別に徴収できる

5. 始めるまでの手順

  1. 対象と診療の範囲を決める: 再診の慢性疾患の患者に限るのか、初診も受けるのか。初診に適さない症状と、処方しない薬剤の院内の線を決める
  2. システムを選ぶ: 事業者から情報セキュリティ対策と責任分界点の説明を受ける。指針は、通信の暗号化をTLS1.3以上(やむを得ず1.2を用いる場合は十分な暗号強度)としている
  3. 医師が研修を受ける: 厚生労働省の「オンライン診療を行う医師向けの研修」をe-learningで受講し、修了証を保管する
  4. 急変時の体制を決める: 自院で対面診療に切り替える流れと、対応できない時間帯の紹介先を決め、患者への説明文を用意する
  5. 医療法の届出をする: 所在地の都道府県知事等(保健所)に、オンライン診療を行う旨を届け出る
  6. 施設基準を届け出る: 地方厚生局に様式1で届け出る。届出の流れは施設基準の届出の手順を参照
  7. ウェブサイトに掲示する: 初診で向精神薬を処方しないこと、医療機関向けチェックリスト、指針を守っている旨、診療前相談の費用を載せる
  8. 受付と会計を整える: オンラインでの資格確認の方法、本人確認、システム利用料の説明と同意の取り方、摘要欄の記載をレセプトコンピュータで確かめる。資格確認の流れはオンライン資格確認の受付手順にまとめています

6. 落とし穴

  • 古いチェックリストを掲示したままにする。 掲示するのは、施行通知の別添3の医療機関向けチェックリストです。施設基準の要件なので、差し替え漏れは個別指導でも確かめられます。
  • 医療法の届出を忘れる。 保険の施設基準の届出とは別の手続きです。経過措置があるのは、令和8年4月1日時点で既にオンライン診療を行っていた診療所だけです。
  • 初診の患者に向精神薬を処方する。 初診で対面診療を経ていない場合は、省令で禁止されています。再診もオンラインのまま続けた患者も同じです。
  • 摘要欄の記載を漏らす。 指針に沿った適切な診療・処方である旨の記載は、留意事項通知の要件です。
  • 電話だけで診療してオンライン診療として扱う。 法律上のオンライン診療は、映像と音声で相互に状態を認識できる方法に限られます。
  • 自由診療だから基準は関係ないと考える。 医療法の基準と立入検査・是正命令は、自由診療のオンライン診療にも適用されます。

7. まとめ

  • 2026年4月から、オンライン診療は医療法で定義され、オンライン診療基準に従うことが義務になった。自由診療も対象。
  • 始めるには、都道府県知事等への届出、医師の研修、指針に沿った体制、地方厚生局への施設基準の届出とウェブサイトの掲示をそろえる。
  • 初診は原則かかりつけの医師。対面を経ていない初診では麻薬・向精神薬は処方できない。
  • 情報通信機器を用いた初診料は253点。指針に沿った診療である旨を診療録と摘要欄に記載する。
  • 掲示するチェックリストは、令和8年3月の施行通知の別添3の版にそろえる。

参考資料