施設基準の届出で最も大事なのは、算定の開始日は受理された日で決まり、さかのぼれないことです。月の最初の開庁日に要件審査を終えて受理されたものは当月1日から、それ以外で月末までに受理されたものは翌月1日から算定します。締切は厚生局が届出書を受け付けた日で判断され、郵便の消印の日ではありません。

届出先は、診療所の所在地を管轄する地方厚生(支)局の都道府県事務所です。方法は郵送か「保険医療機関等電子申請・届出等システム」による電子申請で、FAXは受け付けられません。令和7年8月算定分からは受理通知が郵送されなくなり、厚生局のウェブページで受理状況を確かめる形に変わっています。届け出たあとも、毎年8月1日現在の状況を8月31日までに報告する定例報告があります。

この記事では、令和8年度診療報酬改定の通知(基本診療料:令和8年3月5日 保医発0305第7号、特掲診療料:同第8号)と、地方厚生局の公表資料にもとづいて、届出の流れと注意点を整理します。


1. 施設基準の届出の仕組み

診療報酬の点数表には、厚生労働大臣が定める施設基準(令和8年厚生労働省告示第70号・第71号)に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た医療機関だけが算定できる項目があります。届出の手続きは、次の2つの通知で定められています。

区分通知
基本診療料(初診料・再診料の加算、入院基本料など)「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」令和8年3月5日 保医発0305第7号
特掲診療料(医学管理料、在宅医療、検査、処置など)「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」令和8年3月5日 保医発0305第8号

届出が要るかどうかは、算定しようとしている項目ごとに決まっています。地方厚生局は、令和8年度改定に対応した「基本診療料の届出一覧」「特掲診療料の届出一覧」を公表しているので、まずこの一覧で、自院が算定する項目に届出が必要かを確かめます。


2. 受理と算定開始の関係

受理された時期算定の開始
月の最初の開庁日に要件審査を終えて受理その月の1日から
それ以外で月末までに受理翌月の1日から

地方厚生局の案内では、締切は厚生局が届出書を受け付けた日で判断し、発送日や消印の日ではないとされています。月初からの算定を狙う場合は、郵送の日数と、書類の不備で補正を求められる期間を見込んで、前月のうちに届くよう出すのが安全です。

改定の年の特例

診療報酬改定の年には、施行日から算定するための特例があります。令和8年度改定では、令和8年5月7日から6月1日まで(必着)に届け出れば、6月1日から算定できる扱いでした。5月7日より前には出せず、期限を過ぎた届出は通常の扱いになりました。窓口の混雑を避けるため、できるだけ5月18日までに出すよう求められていたことも、厚生労働省の事務連絡(令和8年3月31日)に書かれています。

次の改定の年も、同じような特例の期間が事務連絡で示されると考えられます。改定の年の春は、厚生局の案内を早めに確かめるようにします。


3. 届出先と方法

届出先

届出先は、医療機関の所在地を管轄する地方厚生(支)局の都道府県事務所です。ただし、埼玉県は関東信越厚生局の指導監査課、愛知県は東海北陸厚生局の指導監査課、宮城県は東北厚生局の指導監査課が窓口です。

方法

方法内容注意点
郵送原則として郵送で1部FAXは不可。控えは自院で保管する
電子申請保険医療機関等電子申請・届出等システムオンライン請求のネットワークにつながった端末と、専用のIDとパスワードが要る

令和8年度改定の概要資料によると、令和8年1月26日時点で324の施設基準がオンラインで申請できます。東北厚生局は、IDの取得に2週間から1か月かかると案内しています。電子申請を使う予定があるなら、改定の年の春より前にIDを取っておきます。

様式は必ず最新の版を使います。改定のあとに古い様式で出すと、差し戻されることがあります。

受理の確かめ方

令和7年8月算定分から、受理番号の郵送による通知は行われなくなりました。各地方厚生局の都道府県事務所のウェブページに掲載される受理状況で確かめます。関東信越厚生局の案内では、掲載は月2回で、受付から掲載までは概ね2週間から1か月です(補正にかかった期間は除く)。

受理状況の掲載を確かめるまでは、算定を始めない運用にしておくと、要件審査で差し戻されていたのに算定していた、という事態を防げます。


4. 届出の手順

  1. 届出一覧で要否を確かめる:算定する項目ごとに、届出が必要か、どの様式を使うかを確かめます。
  2. 要件を満たす根拠をそろえる:職員の資格、配置、研修の修了、設備、院内掲示、ウェブサイトへの掲載など、施設基準の通知が求める要件を一つずつ確かめ、根拠となる書類をそろえます。
  3. 様式を作る:最新の様式に記入し、添付書類を付けます。記載漏れや添付漏れがあると補正を求められ、算定の開始が遅れます。
  4. 受け付けられる日を逆算して出す:月初からの算定を狙う場合は、前月中に厚生局に届くよう出します。
  5. 受理状況を確かめる:厚生局のウェブページで受理を確かめてから算定を始めます。
  6. 控えを保管する:届け出た様式と添付書類の控え、要件を満たしている根拠の記録を、定例報告や指導に備えて保管します。

5. 届け出たあとにやること

定例報告(毎年8月)

毎年8月1日現在で、届け出ている施設基準の要件を満たしているかを自分で点検し、8月31日までに地方厚生局に報告します。令和8年度の期限は8月31日で、東北厚生局は必着としています。

近畿厚生局の案内によると、無床診療所で報告の対象になる項目には次のようなものがあります。

  • 外来・在宅ベースアップ評価料
  • 明細書の発行の「正当な理由」
  • 情報通信機器を用いた診療
  • 予約料などの特別の料金
  • 時間外対応体制加算

郵送のほか電子申請でも一部を報告できますが、厚生局によっては別に郵送が必要な書類があります。管轄の厚生局の案内で様式と方法を確かめてください。

要件を満たさなくなったとき

告示の届出の通則では、届け出た内容と違う事情が生じたときは、速やかに届出の内容を変更しなければならないとされています。人員の退職や設備の変更で要件を満たさなくなった場合は、変更(辞退を含む)の届出が必要です。要件を満たさないまま算定を続けると、指導などで返還を求められる原因になります。

令和8年度改定では、ベースアップ評価料の区分について、「対象職員の数」か「3か月ごとの外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の算定回数」が1割以上変わり、計算し直して区分が変わる場合に変更の届出が要るとされています。

改定のあとの届出の要否

令和8年度改定の通知の「第4 経過措置等」によると、令和8年5月31日に算定していて引き続き算定する項目は、原則として新たに届け出る必要はありません。名称だけが変わった項目も同じで、たとえば「時間外対応加算1〜4」は「時間外対応体制加算1〜4」になりましたが、新しい届出は要りません。一方、新設された項目や施設基準が改正された項目は、届出が必要です。


6. 経過措置の期限(診療所に関係の深いもの)

令和8年度改定の経過措置は、令和8年3月31日時点で改正前の届出をしていた医療機関に適用されます。地方厚生局が公表している通知の引用資料から、診療所に関係の深いものを挙げます。

項目期限と対応
機能強化加算令和9年6月1日以降も算定するなら届出が必要。新しい要件は業務継続計画(BCP)の策定と定期的な見直し
在宅療養支援診療所一部の要件を除き、令和9年6月1日以降も届け出るなら届出が必要
処置の休日加算1・時間外加算1・深夜加算1令和9年6月1日以降も算定するなら届出が必要
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)・(Ⅱ)施設基準の改正により届出が必要な項目に含まれる
外来腫瘍化学療法診療料1令和8年9月30日で経過措置が終了。10月以降も算定するなら、関東信越厚生局の場合は令和8年10月14日必着で届出

経過措置の期限は項目ごとに違い、期限までに届け出ないと算定できなくなります。届け出ている項目の一覧に、経過措置の期限を書き込んで管理することをおすすめします。


7. 適時調査と診療所

地方厚生局の「適時調査実施要領」では、実際に出向いて行う適時調査は、当分の間、原則として医科(病院)を対象とするとされています。診療所の施設基準は、毎年の定例報告による自己点検で確かめる仕組みです。

ただし、診療所であっても、個別指導などの場で施設基準の要件や算定の根拠が確認されることはあります。要件を満たしていることを示す記録を、届け出たときだけでなく継続して残しておくことが必要です。


8. 届出の管理表の例

項目届出日受理の確認日算定開始日要件の根拠(担当)経過措置・見直しの期限
例:時間外対応体制加算電話の体制表(事務長)
例:外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)対象職員の名簿、賃金の記録毎年8月の報告
例:機能強化加算BCP、院内掲示令和9年6月1日以降の算定には届出

この表を、職員の退職や設備の変更があったときに見直す習慣を付けておくと、要件の欠けに早く気づけます。


9. 落とし穴

  • 消印の日で締切を判断する:締切は厚生局が受け付けた日です。月末に投函すると、翌々月からの算定になることがあります。
  • 受理を確かめずに算定を始める:受理通知が郵送されなくなったため、掲載を確かめる手順を決めておかないと、補正で差し戻されていても気づきません。
  • 名称変更と新設を取り違える:名称だけ変わった項目は届出が要りませんが、新設された項目は届出が要ります。令和8年度改定で新設された電子的診療情報連携体制整備加算は、届出が必要です。
  • 経過措置の期限を過ぎる:機能強化加算の業務継続計画のように、期限までに要件を整えて届け出る必要がある項目があります。
  • 定例報告を忘れる:8月は夏季休診と重なりやすい時期です。7月のうちに点検と書類の準備を済ませておきます。
  • 職員の退職を見落とす:届出の要件になっている職員が退職したときは、変更の届出が必要かどうかを確かめます。

10. まとめ

  • 算定の開始は受理の日で決まる。月の最初の開庁日の受理なら当月1日から、それ以外は翌月1日から。さかのぼりはできない
  • 締切は厚生局が受け付けた日。郵送か電子申請で出し、FAXは不可
  • 受理通知は郵送されない。厚生局のウェブページで受理状況を確かめてから算定する
  • 毎年8月1日現在の状況を、8月31日までに定例報告する
  • 令和8年度改定の経過措置には、令和9年6月1日以降の算定に届出が要る項目がある

様式、締切、提出方法は地方厚生局ごとに細部が異なります。届け出る前に、管轄の厚生局の最新の案内を確認してください。


参考資料