「電話がつながらない」という患者からの指摘が続くクリニックでは、多くの場合、電話が集中する時間帯に、対応できる人数が足りていないという単純な構造が背景にあります。受付が窓口対応と電話対応を兼務していると、忙しい時間ほど電話に出られなくなります。
この記事では、電話が集中する時間帯の把握、一次受けの役割分担、電話の件数そのものを減らす仕組みづくりの手順を整理します。
「つながらない」の実態を把握する
対策を決める前に、次の2点を具体的に把握します。
- 電話が集中する時間帯はいつか。 診療開始直後、昼休みの前後、検査結果の説明が終わった直後など、窓口対応と電話対応が重なりやすい時間帯を特定します
- その時間帯に、電話に出られる人数は何人か。 窓口に患者が並んでいるとき、受付の何人が電話に出られる状態にあるかを確認します
1週間ほど、電話が鳴った時刻と、出られなかった件数・折り返しにかかった時間を記録するだけで、どの時間帯が特に厳しいかが具体的に分かります。感覚で「いつも混んでいる」と捉えるより、時間帯を絞って対策を打つほうが効果が出やすくなります。
記録は、電話機やビジネスフォンの着信履歴に加え、受付が手元の紙やタブレットに「出られなかった時刻」を書き留めるだけでも十分です。1週間分がそろえば、曜日や時間帯ごとの傾向が見えてきます。診療開始直後に集中するのか、昼休み前の会計ラッシュと重なるのか、傾向が分かれば、次に決める役割分担や対策の的が絞れます。
電話の内容を分けて、一次受けを決める
電話の内容は、大きく次の3つに分かれます。それぞれ誰が一次受けをするかを先に決めておくと、受付の判断のばらつきが減ります。
| 電話の内容 | 一次受けの例 | 振り分け先 |
|---|---|---|
| 予約の変更・確認 | 受付、またはオンライン予約システム | 電話を受けずに完結させられる部分が最も多い |
| 症状の相談 | あらかじめ決めた担当(看護師など) | その場で答えず、確認して折り返す判断基準を決めておく |
| その他の問い合わせ(診療時間、アクセスなど) | 留守番電話・自動音声応答(IVR) | よくある質問はホームページやIVRの案内で先に解決する |
症状の相談は、受付の判断だけで答える範囲を決めておかないと、対応する人によって答えが変わり、後のトラブルにつながります。誰が、どこまで答えてよいかを事前に取り決めておいてください。緊急性が疑われる症状の相談を受けたときに、すぐに誰へつなぐか(当日の担当医、看護師など)も、あらかじめ決めておくと、電話を受けた側が判断に迷って対応が遅れることを防げます。
電話の件数そのものを減らす
電話がつながらない問題は、人を増やす前に、電話をかけずに済む手段を増やすことでも改善できます。
- オンライン予約システムの導入:予約の新規・変更・確認をオンラインでできるようにすると、電話でのやり取りの多くを減らせます
- WEB問診の活用:来院前にオンラインで症状などを入力してもらうことで、来院時の確認の電話や、当日の聞き取りにかかる時間を減らせます
- 留守番電話・自動音声応答(IVR)の設定:診療時間、休診日、アクセスなど、よくある問い合わせに自動で答える設定をしておくと、その分の電話件数が減ります
- ホームページ・SNSでのよくある質問の掲載:電話をかける前に確認してもらえる場所を用意します
これらはいずれも、電話対応そのものを楽にするのではなく、電話をかける必要そのものを減らす方向の対策です。受付の人数を増やすより、まず取り組みやすい対策から始めてください。
どの対策から始めるかは、電話の内容の分布によって変わります。予約の変更・確認が電話の大半を占めているなら、オンライン予約の導入が最も効果的です。診療時間やアクセスなどの問い合わせが多いなら、留守番電話やホームページの案内を整えるだけでも件数を減らせます。記録した電話の内容を、この3つの分類に振り分けて集計すると、優先すべき対策が見えてきます。
対策の進め方
- 1週間、電話が集中する時間帯と件数を記録する
- 記録から、最も厳しい時間帯を1つか2つに絞る
- その時間帯の一次受けの役割分担を決める(誰が予約対応、誰が症状の相談を受けるか)
- オンライン予約・WEB問診・IVRなど、電話の件数を減らす手段を1つ導入する
- 導入後、再度1週間記録し、出られなかった件数が減ったかを確認する
一度に全部を変えるのではなく、最も厳しい時間帯に絞って対策を打ち、効果を確認してから次に進めるほうが、受付の負担を急に増やさずに進められます。
実行時につまずきやすいところ
「電話対応の人を増やす」で終わらせる。 人を増やしても、電話が集中する時間帯そのものが変わらなければ、忙しい時間はやはり手が回らなくなります。時間帯を分散させる仕組み(オンライン予約への振り分けなど)を合わせて考えてください。
症状の相談への回答基準を決めずに、受付の経験に頼る。 経験の長い受付がいるうちは問題が出にくくても、担当が変わると対応がばらつきます。答えてよい範囲と、確認してから折り返す範囲を、文書として残しておいてください。
電話を減らす対策を導入したのに、周知していない。 オンライン予約やWEB問診を導入しても、患者に知られていなければ利用が広がらず、電話の件数は減りません。受付での案内、ホームページ、待合室での掲示など、複数の場所で案内してください。
受付の人員配置を、開院時のまま見直していない。 患者数や年齢層が開院時と変わっていても、受付の配置人数や役割分担が当時のままになっていることがあります。電話の記録と合わせて、窓口対応と電話対応の人員配置が今の患者数に合っているかも確認してください。
電話でのやり取りに関わる個人情報の扱いは「受付の個人情報の扱い|呼び出し・電話の問い合わせ・家族への説明」も参考にしてください。